とむ

流浪の月のとむのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
2.8
う〜〜〜んなんだろう、僕やっぱ李 相日監督の作風あんま好きじゃないかもしんない…


周囲では絶賛の嵐だった同監督の「怒り」、
僕はと言うとこの作品がすごく苦手でして、
細かい理由は省きますが、要は「"犯罪を犯した者"をあまりにも短絡的に"犯罪者"として描きすぎ」と思ったんです。

で、今作の予告編を見た時に、
前作でそちらに振り切った様な作品を描いてしまったから、今度は反転したストーリーを原作に据えて新作を撮ったのかなと思ったんです。

そしたら、結局「理解できない存在」として描いてることに変わりはない印章でした。
「まぁ、こういう人もいるみたいだからあとはそっちで好きにやって」的な。

LGBTQが多少は尊重される様になった世の中で「自分には理解できないけど、“そういうものだ”と受け入れること」というスタンスは確かに大切だと思うし、
「他の人にはわからない、わたしたちだけの感情」というテーマの作品だから安易にわかってたまるかって内容だとは思うけど、こと表現者としてそういうスタンスってどうなのかなぁ…と思いました。
いや、監督がそういうスタンスの方かはわかりませんが、僕にはそう見えました。

そういう見え方になっちゃったもんだから、
滅茶苦茶に優れた撮影も、
徹底して美しい美術も、
本意気でぶつかり合った役者のお芝居も、
それら全てが陳腐というか、作られたものにしか見えなくなってしまいました。
映画なんだから作り物には違いないんだけど、監督が寄り添わずに撮ってる感じが透けて見えてしまったというか…

誤解のない様に弁明しておくと、映画としてのクオリティはめちゃくちゃ高いです。欠点が見つからないレベル。
横浜流星が最初に家に帰ってきたシーンで、
広瀬すずが枝豆の殻入れを置いた直後にテーブルに枝豆の殻を置いたりとか、
いやーーーな感じで描写された田舎者特有の「可哀想なやつを相手にしてやってる上等な俺(ら)」感とか、そういう嫌味のある演出はピカイチでしたし、
ラストで松坂桃李に"ある秘密"があったことが明かされるシーンも、露骨に描写してないのもすごく良いと思いました。
(ちょっとわかりづらかったけど)

ただ、単純に自分には合わない。苦手。
これは作家性というよりはもはや原作を選ぶ際の審美眼が徹底的に自分には合わない方なんだろうなぁと確信しました。


ただ、ラストの落ち着け方は好きでした。
生き辛さや、あくまで誰かさんが生きやすい様に決めた"社会正義"としての「正しくなさ」すらも抱え込んで、
「自分のために生きてやる」という紗更の選択、僕は大好きです。


あとは今作見て思ったけど、世の中で言う「結婚」ってつくづく「足りてない二人が支え合い、補い合うこと」とされてるんだなぁと思ってしまいました。
僕は今後とも壇蜜の「一人で生きていける覚悟ができたから結婚した」という結婚観を尊重していきたいと思いました。
とむ

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