てっぺい

流浪の月のてっぺいのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.0
【折紙つきの映画】
世間の偏見に翻弄されながら、真実の愛に向かう2人。明かされる彼らの秘密がインパクト極大で、俳優達の本気度が伺える演技には目を見張る。本格派の俳優達、監督、製作スタッフという折紙“つき”の一本。

◆トリビア
○横浜流星は、初共演の広瀬すずとの距離を縮めるため、ジャングルポケットのネタを完コピして披露した。(https://www.fujitv-view.jp/article/post-564906/?amp)
〇広瀬すずと横浜流星は役作りのため、お互いの写真を携帯電話の待ち受け画面にしていた。(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/05/08/kiji/20220508s00041000815000c.html)
○ 松坂桃李は役作りのため、8キロ減量、更紗と過ごした撮影用のアパートで2週間寝泊まりした。(https://news.yahoo.co.jp/articles/6d65d817bd17a58c9e8b69b902fc302f2ac8b87f)
〇松坂桃李は、『流浪の月』のハッシュタグをつけて感想を投稿したら全部見ると宣言した。(https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2192577)
○松坂桃李と広瀬すずは本作を演じるにあたって、監督から勧められた『ムーンライト』『ブロークバック・マウンテン』『たかが世界の終わり』を鑑賞した。(https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220511-rurounotsuki-suzu-hirose)
○ロケ地は、長野県大町市北部の青木湖ほか、長野県松本市などで行われた。(https://channel-rei.com/rurounotuki-roketi/)
〇撮影監督ホン・ギョンピョによる撮り下ろし写真展が全国10劇場で開催される。(https://fansvoice.jp/2022/05/07/the-wandering-moon-dp-stills/)
〇本作は『パラサイト 半地下の家族』撮影監督のホン・ギョンピョや、『キル・ビル Vol.1』美術等で世界で活躍する種田陽平など、国を越えた才能が競演する。(https://www.pen-online.jp/article/010406.html)

◆関連作品
○「流浪の月 エピソード0」
監督や出演者たちのインタビューを交えたドキュメンタリータッチのメイキング。U-NEXTで登録なしで視聴可。
○「怒り」('16)
李相日監督、広瀬すず出演作品。広瀬すずの体当たり演技も。第40回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞、優秀助演女優賞受賞。プライムビデオ配信中。
○「悪人」('10)
李相日監督作品。モントリオール世界映画祭ワールド・コンベンション部門正式出品、深津絵里が最優秀女優賞を受賞。プライムビデオ配信中。
○「娼年」('18)
松坂桃李が、世の中の自分に対するイメージについて割り切れたと話す作品。(https://www.fashion-press.net/news/86769/2)
体当たり演技連発します。プライムビデオ配信中。

◆概要
【原作】
凪良ゆう「流浪の月」(2020年本屋大賞受賞作品)
【監督】
「怒り」李相日(リ・サンイル)
【出演】
松坂桃李、広瀬すず、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子、柄本明
【撮影監督】
「パラサイト 半地下の家族」ホン・ギョンピョ(本作で日本映画に初参加)
【公開】2022年5月13日
【上映時間】150分

◆ストーリー
ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰りたがらず、文は彼女を自宅に連れて帰る。更紗はそのまま2カ月を文の部屋で過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負って生きることとなった更紗と文は、事件から15年後に再会するが……。


◆以下ネタバレ


◆流浪の月
「人は物事を見たいようにしか見ない」劇中の台詞の通り、世間の偏見に苦しめられ続けた2人。それでも、“出会っては別れ、また出会う”あのバカラのグラスのように、引き寄せ合うように再会して寄り添い合う。「うち、来る?」「店、来る?」にどちらも「うん、行く」と繋がる絆が微笑ましくも儚かった。ニュースや記事に、ネットにも幾度も晒され、恋人や母にも及ぶ偏見にも翻弄されながら、次第に明かされる2人の秘密。親族からの虐待や、肉体のコンプレックスと、何一ついい事がなかった2人にこそ逆に生まれる愛だと合点がいった。それこそ2人にしか分からない真実の愛であり、それは流浪する月のように、世間からは儚く見えるのかもしれない。

◆演者
余りにも衝撃的すぎる文の全裸。下着を下ろす時の松坂桃李の震える演技はこちらも身震いするほど凄まじいものだったし、ネットに晒した亮に詰め寄る更紗(広瀬すず)の、あの怒りが溢れんばかりの鬼のような目も素晴らしかった。執拗に身体を求める、狂気と粘着質満載の横浜流星も凄い。李監督の作品は本当に感情爆発シーンの凄みが突出しているイメージで、本作は特に見応えあり。「悪人」の樹木希林(本作ではその娘の内田也哉子)、「怒り」の柄本明がそれぞれカメオ出演(にほぼ近い)していたのも、李監督ファンにはニヤリものだったし、幼少期の更紗(白鳥玉季)の広瀬すずとの激似具合も驚いた。

◆演出
更紗と文がそれぞれの秘密を語るシーン(どちらもカフェ)は共通して長めのワンカット、そして表情が読み取れないほど少し広めの画。それがとても印象的で、演者の“間”で、演者の演技力を信じて、逆に演出をつけずに撮った、こだわりのシーンのように思えた。また、空に見えた月は、映画を通して大きな月から半月になり、2人がラストで見上げたそれは、もう欠け終わるほどの細い三日月に。そんな月の姿は、揺るぎない絆と愛を得たものの、その先にある2人の行末の儚さを暗示しているような、そんな演出にも思えた。

引用元
https://eiga.com/movie/95363/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/流浪の月
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