流浪の月のえりのネタバレレビュー・内容・結末

原作未読、李相日監督の映画が好きなので劇場に足を運びましたが、いい意味で一度見るだけでは消化しきれないモヤモヤが残る作品でした。
冒頭の方で更紗が恋人の亮と並んで鏡に映るシーンで、亮が去るなり口元に笑みを浮かべていた更紗が真顔に戻る……というシーンがあり、その一瞬で更紗という女性が現在置かれている状況と感情を描く李監督、さすがでした。

作品の後半まで松坂桃李演ずる文のバックグラウンドがはっきりとしないため半ば身構えながら見ていたのですが、文が静から動に転ずるシーンの爆発がとても良かったです。
悪意と善意があまりに紙一重で、誰にもわかってもらえないふたりが共にいるのは単なる依存なのか、それとも……と映画館を出た後も延々と考え続けてしまう、そんな作品でした。

それにしても横浜流星くんの演技が壮絶でした。
彼から逃げた更紗が一人暮らしの部屋を得てカーテンが風を含んで揺れるシーンの開放感、あまりに美しくて最高でした。

原作を買ってきたので映画を思い出しつつ読もうと思います。