ぶみ

流浪の月のぶみのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
3.5
ふたりしか知らない、あの夏の真実。

凪良ゆうが上梓した同名小説を、李相日監督、脚本、広瀬すず、松坂桃李主演により映像化したドラマ。
偶然再開した女児誘拐事件の当事者二人の姿を描く。
原作は未読。
事件の加害者とされた佐伯文を松坂、同じく被害者とされた家内更紗を広瀬が演じているほか、それぞれの交際相手として多部未華子、横浜流星が登場し、いずれも圧巻の演技を見せてくれている。
また、登場シーンは少ないものの、アンティーク店のオーナーとして柄本明が登場して、抜群の存在感を放つとともに、10歳時の頃の更紗を演じた白鳥玉季も素晴らしく、まさに広瀬の子ども時代を見ているかのよう。
物語は、事件当時と現在の映像が時折重なりつつ進行していくが、そのトーンは常に陰鬱かつ重苦しいもの。
タッチもさることながら、殆どの登場人物が何らかの問題を抱えているのも、その要因の一つ。
当事者二人にとっては夢のような時間でも、側から見ると社会的には誘拐事件とされてしまうように、事実は一つでも、真実は人の数だけあり、それを語りすぎず、かと言って行間を深く読ませるわけではなくというバランスが絶妙。
ただ、そんな重厚な作品ながら、文の隣の部屋が都合良く空いていたことを筆頭に、時折りあまりにもご都合主義すぎる点が散見されたのは残念なところ。
原作を知らない私は、予告編からミステリやサスペンス強めの作風を想像していたが、どっしりとした映像と、見応え十分の俳優陣の演技に支えられたドラマに良い意味で裏切られるとともに、まさに自分では光ることができず、夜を彷徨う月のような二人の未来に、確かな愛と希望を感じさせてくれる一作。

私の何を知ってるの?

〜The Wandering Moon〜
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