Omizu

流浪の月のOmizuのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.2
『フラガール』『怒り』などの李相日監督作品。流石、見せるねー!正直稀に見る不作な今年の邦画ではレベルが違うほど上手いし、これが映画だよな!という映画的な豊かさがある。

全体としてすごく上手いし、今年ベスト級の作品だと思う。音楽がとてもよく、引くところは引くバランスがよかった。また言わずもがな撮影は美しい。冒頭からして撮影と音が素晴らしかった。

松坂桃李が上手いのは当然として、広瀬すずは大人の映画女優として完全に開眼したという印象。また子供時代を演じた白鳥玉季さん、特別演技が上手いという訳ではないが、声が妙に大人びていて非常にこの作品には効果的だった。あれ?樹木希林生き返った?と思ったら半分合ってた。内田也哉子さん、とてもよかった。

概ね文句なしなんだけど、それだけに小さな欠点が気になった。

まず趣里演じる同僚は常にタバコ吸ってるやさぐれバツイチ女っていうキャラクターは流石に安易すぎでは?逆に柄本明演じる店のオーナーは一番迷惑を被ったはずなのに一シーン以外一切登場しないのはいかがなものか。

あと音楽はよかったんだけど、序盤の洋楽ポップス使いは「??」ってなった。合ってなさすぎだしあれ何?

とはいえ概ね素晴らしかった。最後の文の秘密もしっかり伏線張られていて、ああ、それなら納得となった。このまま終わったらどうしようと思ったんだけどそこは流石の李相日、そんな安易では当然なかった。

李相日のいいところは、普段の生活の何気ない仕草や行動を美しく見せてくれることだと思う。何か特別な部分だけ取り出す作品が多い中、そういう点でも頭一つ抜けてる。ああ、これは二時間半かかるなという充実な内容だった。

今のところ『愛なのに』に次ぐ邦画2位につけた。監督に色々問題あるのは知ってるけどこれはもう参りましたとしか言えない。
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