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流浪の月のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

流浪の月(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ヒロインは10歳の頃に身を寄せている叔母の家に帰りたくないことから公園にの留まっているところを大学生の青年に声をかけられる。ヒロインの気持ちを尊重した彼は自分の部屋に匿うことになるのだが、そのことで彼は誘拐犯として逮捕されてしまう。それから15年後、成長したヒロインは偶然入ったカフェで働く彼と再会するのだが......という話。主演は広瀬すずと松坂桃李。原作小説は未読。

小児性愛者の誘拐とみなされた事件の、当事者の視点から見た真実を描いた作品。
現実におけるこうした事件一般を擁護する気はないのだが、家庭での問題が原因で半ば家出した少女と自らの体質と性癖から孤独に生きてきた青年の奇妙な同居生活によって、二人の間には他者には理解できない確かな絆が生まれていて、そんな二人が常識ある社会によって引き離されるところが物悲しかった。事件後の二人の人生も周囲の偏見や好奇の目に晒され苦しんでいたことがうかがえて、短い時間で経験した共同生活の尊さと事件による互いへの罪の意識が心に根付いていることが感じられた。ヒロインが預かった職場同僚の娘の存在が、かつての二人の境遇を思い起こさせる役割を担っているのも上手かった。その女の子が(大人である)ヒロインのことが好きなのだから青年はロリコンではないと述べた時の青年の表情が印象的だった。
最後は二人にとってはハッピーエンドなのかなあ?

難点はこのストーリーにしては上映時間が長く、テンポが悪いところかと。
主人公二人が割と寡黙で感情を他人に見せない傾向があるので、その部分をじっくりと描いているのは良いのだが、全体的に余分なエピソードが多かったような気がした。特に横浜流星演じるDVな同棲相手の出番は破局後はもっと少なくても良かったのでは。
また、同棲解消後に青年のもとに身を寄せてからのヒロインは迂闊な行動が多く、元々加害者と被害者という位置づけだった二人が同じ建物に済むことによる周りの目とか、幼女誘拐犯の前科がある青年に女の子を近づける社会的リスクへの配慮が足りないように思えた。
僕はすごい好きなタイプのお話なのだが、偏見ある人は文句言いそうなテーマかなあ。

普段はあまり感じないのだが、広瀬すずはふとした瞬間に広瀬アリスと似た表情になると思った。大人になったからかなあ。
あと、8キロ減量したという松坂桃李が相当ガリガリでビックリした。
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