はる

流浪の月のはるのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.0
原作が良い。原作を読んでから観ることをおすすめする。

自分では変えることのできない部分は、誰しもが持っている。身体的な特質だとか、セクシュアリティだとか。生まれもったその特性が社会にとって悪とみなされた時、その人は非難されて、隠して、ただ孤独の中を生きていくしかない。
私は世の中の"多様性の時代"という言葉にいつも違和感を覚える。人間は多様であるのが当たり前で、同じ人間など1人もいない。そしてその多様性は、時に人を傷つけるものもあれば、人に受け入れられないものもある。今は"多様性の時代"、そんなことを言えるのは、自分がありのままで生きることを許されている、所謂マジョリティと呼ばれる人たちだけだ。受け入れたふりをしているだけで、本当は何も見えていない。サイコパスもロリコンも、なりたくてなれるものではない。秩序を優先すれば、"自分らしく生きろ"が、どうしてもできない人間がこの世には存在する。多様性の時代なんて、マイノリティに寄り添って救った気になっている偽善者の言葉だ。言い過ぎかもしれないが、全員が自分のありのままで、包み隠さずに生きることができる、本当の"多様性の時代"など、絶対に来るわけがない。法があり、秩序を優先し、民主主義をとる私たちの社会で、すべての多様性を受け入れられるわけがない。そういうどうしようもできない社会のリアルを強く感じさせる作品。どうしようもできないもどかしさや理不尽さに、心が押しつぶされる。
そしてそういったマイノリティの救いもまた、人間なのだ。誰かひとり、本当の自分を受け入れてくれる人がいたら、その人はそれだけで救われるのだと思う。しょうがないだろ、隠せよ、なんて軽い言葉じゃ解決しないほど、本音や自分のありのままを隠して我慢して生きることは、想像の何倍も辛く苦しい。自分の居場所は、自分のありのままでいられる場所であり、自分のありのままを受け入れてくれる人の隣なのかもしれない。

それと、救われるべき人は亮くんなのかもしれないと思った。本当の愛を知らない、1番報われないキャラクターで、ただのクズ男に見えるけど、確実に裏に理由がある。手を差し伸べてくれる人が、必ずしも現れるわけじゃない。それも自分の行動次第なんだろうけど
はる

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