CHICORITA主任

ARGYLLE/アーガイルのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)
3.8
キングスマンシリーズでおなじみマシュー・ヴォーンの新作は、人気スパイ小説作家が実際のスパイの抗争に巻き込まれるというメタフィクショナルなスパイ・コメディ。

歴代スパイ映画のパロディ的作品キングスマンに続いて、また新たなスパイものをやるというのが少々意外でしたが、本作は女性主人公で、ストーリー的にもツイストにツイストを重ねる意外性のある展開で、比較的シンプルだったキングスマンとは趣の違う一作に仕上がっていました。

一方でかなりの手数で繰り広げられるコメディ描写の手腕は健在。キングスマンのお下劣ギャグマシマシぶりに比べると本作は上品でファミリー層にも安心なレベルだった印象です。その分突き抜け感も抑えめだったので、少し物足りなさも感じられましたが。

ブライス・ダラス・ハワード演じる人気作家エリーは、ちょっとぽっちゃり体型でチャーミング。ヘンリー・カヴィル演じる劇中小説の主人公アーガイルの姿を度々幻視してしまう描写の天丼には次第に爆笑してしまいました。エリーを守るちょっと冴えないスパイ、エイデン演じるサム・ロックウェルの良い意味で気の抜けた感じの演技も素晴らしく、第2の主人公としての存在感たっぷり。サミュエル・L・ジャクソンやソフィア・ブテラといったどこかで見た面々の出演にもキングスマンファンとしてはニヤリとさせられました。

アクション面ではそれほど新味のある点はなかったものの、終盤の2つのアクションシークエンスはかなり笑えました。アクション映画というよりは、やはりコメディ映画という感じ。

音楽は新旧ディスコミュージックが多用されるなどノリノリで、またビートルズの幻の楽曲を復活させた『Now And Then』を多用するなど、音楽面での見どころ(聴きどころ)も多い作品でした。主題歌「Electric Energy」もかっこよかった。

総じてキングスマン(特に第1作目)と比較すると控えめで驚きや過激さに欠けるものの、スパイ・コメディとしては十分な楽しさで、ポップコーンムービーとしては申し分のない作品。
休日に気楽に楽しむ映画としては最高だと思うので、ぜひ劇場でご覧ください。
CHICORITA主任

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