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ARGYLLE/アーガイルのRのネタバレレビュー・内容・結末

ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

※全編ネタバレしてます!

映画館で。

2024年のイギリスの作品。

監督は「キングスマン」のマシュー・ヴォーン。

あらすじ

大人気スパイ小説「アーガイル」の作者エリー・コンウェイ(ブライス・ダラス・ハワード「ジュラシック・ワールド/新たな支配者」)の素顔は愛猫アルフィーと暮らす平和主義者。しかし、新作の物語が実在するスパイ組織の活動と一致したことで組織に追われる身となってしまう。そんな彼女の前に現れたのは猫アレルギーのスパイ、エイダン(サム・ロックウェル「バットガイズ」)。訳もわからぬままエイダンに助け出され、行動することになったエリーは無事に元の平穏な生活に戻ることができるのか?

みんな大好きマシュー・ヴォーン監督作はもちろん、俺も大好きで意外と監督作も多くないので過去作は全部観てる!…と言いたいところなんだけど、実は前作「キングスマン:ファーストエージェント」は公開見逃してから未だに観ていない状態💦

そんな前作から3年ぶりとなる新作はまたもやスパイ映画ということで、もしかして「あの作品」との繋がりがあったりなかったりするのか?そこら辺も含めて気になって観てきました!

お話はあらすじの通り、スパイ映画、それも「自分が書いた架空のスパイ小説が本当の出来事だった!?」という「事実は小説よりも奇なり」をそのまんまを描いたようなジャンル的には「巻き込まれるサスペンス」な内容となっている。

で、冒頭、そのスパイ小説の主人公ヘンリー・カヴィル(「エノーラ・ホームズの事件簿2」)演じるアーガイルが出てくる、つまり「劇中劇」が始まる訳なんだけど、見た目はトレードマークの「角刈り」にファッションは深緑色のマオカラージャケット(今回こういうファッションの名称を初めて知ったけど、要は立襟スーツ、「マオ」はかの毛沢東の英語名から由来しているらしい、へー。)!という、どちらかというとスパイというよりかは悪の組織の首領みたいなエキセントリックな格好なんだけど、それが「コードネームU.N.C.L.E」でもスパイを演じたカヴィルがまた違ったイメージで演じているから新鮮で不思議と似合っちゃってる!

そこでは、他にも世界的スーパースター(らしい)デュア・リパ(「バービー」)演じる敵組織の女スパイ、ルグランジェが出てきたり、アーガイルの相棒ワイアットとして、あの元レスラーのジョン・シナ(「僕らのマブダチ ヘンリー・スタニッキー」)が出てきて、しょっぱなから、まさにスパイアクションど直球なダンスシーンや銃撃戦、カーアクションなどを披露してくれるんだけど、先程述べたようにこれは「劇中劇」。

本当の物語の主役はそんな稀代のスパイ「アーガイル」を主人公にした小説を書く作家のエリー。

演じるのは、あの「ジュラシック・ワールド」シリーズでヒロインを演じたブライス・ダラス・ハワード!!…なんだけど、なんつーか今作ではあの時のセクシーで可憐さもあるヒロイン像からまた一転、なんつーか…かなりぽっちゃりしてません笑笑?

確か「新たな支配者」の宣伝映像でクリス・プラットと一緒に出てる映像かなんかで「え?本当に本人!?」ってくらいめちゃくちゃ激太りしていて唖然とした記憶があってお子さんの出産で産後うつになっちゃって度々激太りしてるらしい)、その頃に比べると顔だけはボリュームのある髪型で輪郭は誤魔化してるようには見えるものの確かにあの頃の感じはあってめちゃくちゃキレイなんだけど、体型だけその頃の体型が残っているのかぽっちゃりで、なんかすごく違和感がある。

まぁ、役柄的には飼い猫を愛する「猫おばさん」というキャラクターに「最初は」なっているので、そのキャラクターにはピッタリハマるんだけど、これが役作りなのか、体型を戻すのに上手くいかなかったのか分からず、この点に関しては個人的に上手くそれまでのイメージが上手く払拭できなくて混乱してしまった。

まぁ、別に個人的な感慨でどうでもいい話なんだけど、他の人はどう観たんだろうなぁー、すげぇ気になる!

まぁ、それはそれとして、このエリーというキャラクター自体は彼女が演じているからすごく魅力的ではある!大ヒットベストセラー小説の作家と言っても変にお高く留まらず、「仕事が恋人」と新作の構想だけを常に考えてるようなプロ意識はあるし、服装も割と地味め。ただ、旅先に出かける際に愛猫アルフィー(どうやら実際にヴォーン監督の愛猫チップ君を起用しているんだとか!)を「アーガイル」柄のここだけド派手で独特なペットリュックを肌身離さず背負っているのがとってもキュートだった。

で、そんな彼女の小説「アーガイル」が実は現実世界の悪の組織の動向とリンクしてしまい、その悪の組織「ディヴィジョン」に付け狙われることに!!

そんな彼女の前に現れたのが小説の中のアーガイルとは似ても似つかないおっさんスパイ、サム・ロックウェルが演じるエイダン・ワイルド!!初登場時は髭ボサボサでヒッピーともホームレスにも見えるような不審者全開な感じなんだけど、そこから列車内で行われる多数の下っ端相手とのアクションシークエンスはまさに「舐めてた相手が殺人マシーンでした(©️ギンティ小林)映画」のそれで巧みなテンポで所作良く敵を撃ち倒していく様がめちゃくちゃカッコいい!!

ただ、そのアクションの中でも腰を痛めちゃったり、若干苦戦していたりと「オッサン感」もあって、それこそ「キングスマン」でコリン・ファレル演じるハリーというキャラクターを通して「イケオジ」を描いてきた監督が新たに打ち出すキャラクターとしてはとても新鮮!!加えて、それを演じるのがアカデミーでも再注目された演技派ロックウェルがやれやれ…感溢れる感じで好演しているからめちゃくちゃ渋いわぁ…。

あとフィクションの世界のスパイがクールでゴージャスなイメージなのに対して今作のエイダンはそんな要素はかけらもなく現実世界に溶け込む目立たない存在というのもリアル寄りというかそういう意味でもこれまでの所謂漫画的なスパイキャラクターを描いてきたヴォーン作品において新鮮なキャラクターとも言える。

そんな「猫おばさん」×「おっさんスパイ」という、かなり変則的な「バディもの」としても楽しめる本作(男女のコンビが行動を共にしていく中で関係性を構築していく感じはまさに監督が参考にしたらしい「ロマンシング・ストーン」的)なんだけど、お話的には監督作で過去一ってくらい「二転三転」する話運びがまた面白い。

エイデンと行動していく中で、実はディヴィジョンのボスが実の父親であるリッター(ブライアン・クランストン「アステロイド・シティ」)であり、お母さんのルース(キャサリン・オハラ「ペイン・ハスラーズ」)も組織の心理学者だったことが発覚したかと思えば、中盤では実はエリーこそがアーガイルの元になった伝説のエージェント、レイチェル・カイル(つまり、R・カイル=アーガイルという言葉遊び)で、エイデンとはかつての仲間だったことが発覚!!かと思ったら、実はディヴィジョン側の二重スパイだったことも後々明らかになるという…何が本当なのかわからない展開になってこちらも大混乱!!

まぁ、つまりエリーとは仮の姿で本当は伝説のスパイだったというオチなんだけど、果たして彼女がエリー(正義)なのか?レイチェル(悪)なのか?ってところが後半部分の主題となっていくんだけど、一旦はレイチェルとして記憶を取り戻し、あれだけ可愛がっていた愛猫アルフィーを「猫は嫌いだから」とあっさりと手放し、組織に囚われたエイダンを自らの手で冷酷に撃ち殺す…かと思いきや、人格はエリーでスキルはレイチェルという善も悪も入り混じった本当の「自分」として覚醒する流れはエリーの自分探しの物語として観ると激アツ!!

特にマシュー・ヴォーンの真骨頂のド派手でゴージャスな後半のアクションはまさにセンス・オブ・ワンダー!!

正義の心を取り戻したエリーはエイデンと再会、裏切り裏切られを重ねて、遂に真の意味での「愛」を取り戻して多数の敵と華麗に銃撃戦を繰り広げる「殺人バレエダンス」シークエンス!!

エリーとエイデンが立て篭もる武器庫の扉前に明らかにシンメトリー(左右対称)で配置される敵部隊!!そこに扉が開け放たれるとまるで2人の再会を祝福するかのような赤、黄、青、オレンジ…と色とりどりのカラフルなスモークが景色を彩り、撹乱し、視界を覆い尽くす中で社交ダンスと格闘術、そして銃アクションが融合したかのように2人が舞踊りながら敵をビートルズの「ナウ・アンド・ゼン」という、まさに「愛の歌」にのせてロマンチックにバッタバッタと撃ち倒していく様は、これぞマシュー・ヴォーン映画と言わんばかりの類を見ないアクションシーンとなっていて圧巻!!

ただ、このシーンは予告でもちょろっと流されていて、なんとなく知ってはいたんだけど、ここで終わらないのが本作!!

その後、更に追撃をかける敵部隊との戦闘シーンでは敵の銃撃で逃げおおせた工場エリアのタンクから原油が漏れ出して、先ほどのカラフルさから一転、床が真っ黒なオイルまみれになる中、追い詰められて大ピンチ!!そこにエリーa.k.aレイチェルがスケートが得意だったという記憶を生かし、なんとナイフを靴に装着し、アイスリンクならぬオイルリンクにした「死のオイルスケート」シーンが開幕っ!!

原理どうなってるんだ!?ってくらいものすごいスピードでオイルで滑走したエリーがナイフでアサシンキルしまくったと思ったら、今度は羽生結弦ばりに神技アクセルを決め込んでの銃撃キルのつるべ撃ちにノックアウト!!マジでこんなアクション、この監督にしか思いつかねぇよ!ってくらい新感覚なアクションシーンで大満足!!

まぁ、確かに「キングスマン」みたいな感じを期待して観ると肩透かしを喰らう「騙し」要素がある作品だったけど、ラストの2連アクションも含めて概ね満足するヴォーン監督らしい作品でした。

そして、監督でスパイ映画といえばあの映画!そう「キングスマン」シリーズとの関連はいかに!?という部分なんだけど、最後にエリーにメールした人物こそが、そこに関わる人物!と思って期待していたら全然違くて、やっぱ全然関係ない作品なのかぁ…と思っていたら最後の最後でありました!!…ただ、これは監督的には「メタ」的なサービスってことなのかなぁ?果たしてこのサービスだけで終わるのか?それとも「スパイ・ユニバース」としてアーガイル?それともエリー&エイダンコンビが再登場するのか?作品ごとに濃いめのキャラクターが出てくる監督作なだけあってこういうアレコレを考えるのもまた楽しい!!

という感じで、個人的にはかなり楽しめました。それでなくともファンの多いマシュー・ヴォーン最新作、普通に「キングスマン」的なものじゃなくても面白い作品なので是非鑑賞するのをオススメします!!

ただ、まぁ猫は可愛かったけど流石にあざとすぎるかなぁ。僕も「犬派」なもんで😜
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