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レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

4.0
『レッドクリフ Part II -未来への最終決戦-』(赤壁2:決戦天下)2009

さて赤壁に布陣した劉備・孫権連合軍。数倍の戦力で川を挟んだ対岸に数万の船で布陣した曹操軍。

全力で圧倒的に劣る劉備・孫権連合軍はいかにして曹操を迎え撃つのか?

敵陣に潜入する女スパイ。伝染病に罹った兵士の死体を船に乗せて送りつける曹操の非道。劉備軍の離脱。果たして周瑜と孔明は勝利できるのか?

ジョン・ウーと言えばスローモーションを多用した緩急自在の語り口だ。この緩急の語り口がまるで講談のようだ。そうジョン・ウーは映画界の神田伯山だ。畳み掛けるアクションが急にスローになり手に汗を握る。たおやかな美女の意外な選択ありボーイッシュな女スパイの活躍ありと盛り沢山だ。

曹操の水軍に対して火を付けた軍船を突入させる案を孫権配下の将軍が提案する。しかし孔明は風が向かい風なので自分達の方に火が広がるだけだと指摘する。

孔明は曹操が布陣した奥まった湾はこの季節のある日を境にして風向きが逆になり曹操軍に向かって風が吹くと指摘する。

風が変わるタイミングまで耐える孫権の水軍。さて孔明の予言通り風向きは変わるのか?

この風の向きが逆転するという点で思い出した作品がある。木下順二の「子午線の祀り」だ。源平が戦った壇ノ浦を描いている。

平家は壇ノ浦の西側、源氏は東側に布陣した。開戦時は西から東に海流が流れて平家が有利だった。しかし上空を通過する月の引力が海面に作用して月が通過した後は東側から西へと海流が変わったのだ。流れに乗った源氏が平家の船に襲いかかった。

「子午線の祀り」では海上では日本の支配者を決める戦いが行われているが月はいつものように関門海峡上空を通過しただけなのだという自然のスケールから見た人間の営みの小ささを対比して無常を描き出した。

「レッドクリフ」ではとてつもないスケールで周瑜と孔明の作戦を描く。燃え盛る軍船が次々とミサイルのように曹操軍の軍船を破壊していく。

あまりの悲惨な描写は爽快感よりも恐ろしさを感じる。あまりにもたくさんの人間が曹操の野望のために犠牲になった。その事への恐怖と怒りが周瑜を突き動かす。

爽快な活劇で終わった前編に比べると戦争の悲惨さまで描いた後編は心に残る。素晴らしいものを見せてもらったという感慨で満たされた。
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