MasaichiYaguchi

北風アウトサイダーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

北風アウトサイダー(2022年製作の映画)
3.9
劇団野良犬弾の主宰者で俳優の崔哲浩さんが、自身の半生を基に監督・脚本・主演を務めた本作では、大阪・生野の在日朝鮮人の町を舞台に、そこに暮らす兄妹の絆をテーマに、人種的偏見や貧困といった厳しい状況を交えながら骨太な人間ドラマが繰り広げられる。
生野にある在日朝鮮人の町で、みんなに母親のように慕われた存在だったオモニの葬儀が行われていた。
しかし15年前に失踪した長男ヨンギの姿はそこにはなく、ヨンギを除く3兄妹は、亡くなったオモニが営んでいた店の借金に追われ途方に暮れている。
暫くしてヨンギが帰ってくるが、兄妹たちは尾羽打ち枯らした彼の姿に驚くと共に困惑してしまう。
ここからヨンギを軸とした4兄妹の葛藤を交えたドラマが幕を開ける。
私が生まれ育った東京下町には幼稚園・小学校・中学校相当の教育を行っている朝鮮学校がある。
同じ区内でも学校同士を含めて交流はなく、子ども心にも何か見えない壁があって、存在は知っていても近付くこともなかった。 
一種の不可侵エリアのような感じだったことを記憶している。
ロシアのウクライナ侵攻で、この頃、ニュースになることも減ったが、北朝鮮というと、「拉致問題」「ミサイル発射」が真っ先に思い浮かぶ。
一時期は南北朝鮮関係改善の兆しもあったが、現在は硬直しているように感じられる。
そんな逆風吹く社会状況下、本作は固い家族や仲間の絆で困難を乗り越えようとする人々のバイタリティーがスクリーンから伝わってきて胸を熱くします。