シリシャリ

北風アウトサイダーのシリシャリのネタバレレビュー・内容・結末

北風アウトサイダー(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

昭和?平成?何年くらいのお話しなのかははっきりわかりませんでしたが、実話が元になっているとのこと。在日の知人や在日の人と結婚した友人もいますが、就職が大変なことくらいしか知らず、全く想像すらしなかった世界でした。映画の中では、進学先を日本の大学にするか朝鮮大学にするか迷っている在日4世の子が出ていて、令和の今は5世、6世の時代になっているのでしょうか。それでも在日の方々の環境は劇的に良い方に変化はしていないように想像します。北朝鮮が相変わらずあの感じなわけですし。

【ここからネタバレ】
ところで肝心の長男が家を出て行った理由についてですが「長男の盲目の彼女が妊娠して、それを知ったオモニがメチャクチャ罵倒したからだった」ということが、後に《さらっと》語られます。下手したら聞き流してしまいそうな感じで。それじゃあ元はと言えば悪いのはオモニで、謝らなければならなかったのはオモニの葬儀に現れなかった長男ではなく、嫁を自殺に追いやったオモニだったんじゃん!
しかもそんなオモニが「朝鮮人も日本人も同じ人間なんだから必ずいつかは仲良くなれる」というようなことをこれまた《さらっと》言っている。健常者も障がいのある人も同じ人間なのに最愛の長男の嫁としては受け入れられなかったくせに。
つまり差別に苦しめられてきたがゆえに他人の苦しみがよく分かり全ての人に一番寛容そうに見えていたオモニにさえ、内には差別の心が潜んでいた…2つの差別の現場を敢えて《さらっと》描くことで、どれだけ人間が知らず知らずのうちに差別の心に侵されてしまっているかということを表現しているのでしょうか?そしてそれに気付きにくいからこそ人間が差別の業を乗り越えることは難しいと…