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私ときどきレッサーパンダのKHのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
4.0
ストーリーも好きだけど1番は映画全体の色味が物凄く可愛い。
主人公は赤や赤紫の色で、それと対比的にお母さんや学校などは緑色が使われてて配色のセンスが絶妙で、映画の世界観とマッチして凄く良い。
真面目で学級委員長系で周りの子から少し煙たがられているオタク系女子が主人公の物語。
舞台はカナダのトロントにあるチャイナタウン。中国だからか儒教的な価値観の基、今風に言うと過保護で毒親のお母さん。
最初は「赤いパンダ」を怪物扱いするが、徐々に主人公はパンダを受け入れ初め、パンダも自分の1面だと気付く。
物語自体はピクサーらしく真っ直ぐなストーリーだけど、現代的なオタク感覚を持つ魅力的なキャラクター、単純な画の可愛さ、日本の漫画アニメ的な演出などなどで1本の映画としての満足が大きい。
またこの映画のポイントは時代が2002年という所だと思う。この映画は中国系カナダ人の監督が、主に女性クリエイターを中心として作り上げた作品らしく、2002年とは監督にとっての思春期でもあり青春の時代であり、2002年に時代設定したのは監督にとってそれが1番リアルだったからだと思う。
現在みたいにファッション的な意味でオタクが使われたり、バカにする方が逆にダサいって価値観っていうより、
20年前のオタクはいじめられるほど弱くないけど、周りから白い目で見られる変わった子たち認定されるくらいの認識(4townのライブに恥ずかしそうに行くタイラーに当時の認識が出ている)が2002年のオタクへの世間の絶妙なリアルさだったのだと思う。

「赤いパンダ」とはなにか。
大切なのはこの赤いパンダは女性にしか起こらない点だと思う。原題はturning redという題名で直訳すると赤面するとなる。
赤いパンダとは思春期でありそれは、男の子を好きになったり、親に反抗したりと、この時期に起こる特有の色んな衝動のメタファだと思う。
男の子はそういう衝動に真っ直ぐでいてもいいけど、女の子は表立って真っ直ぐになれない風潮は確かにある。
だからこそ、その衝動が女性にのみレッサーパンダという怪物になって現れるのだと思う。
この衝動は本来の意味での女性でいる事であるし、それを怪物として抑圧していた母や祖母との価値観の違いが出てるところだと思う。
だからといって、母や祖母の生き方といった前時代的女性像を否定するわけでなく、それらを含めて共生しようとしていき、最後に主人公が「あなたはどっち」と観客に問いかけるのは一枚上手!

みんなでパンダになったシーンを最高にかっこよく演出するのは、やっぱり女性のパワフルさをきわだてるし、この映画は凄い!

ミズマーベルにしろ今作にしろオタクは世界的カルチャーだと改めて感じた。
KH

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