えむ

ブルー・バイユーのえむのレビュー・感想・評価

ブルー・バイユー(2021年製作の映画)
3.7
哀しく、悔しく、切ない映画でした。
希望の光があまりに小さく、観終わったあとに心が沈みます。

養子縁組で子供の頃から育った国を、市民権がないからと追放される。
市民権を取っていないのは、年端もいかぬ頃に他者の都合に流された本人の罪ではありません。

同じように養子縁組され、市民権を持たぬ者はたくさんいるのだろうけど、彼らが追放者として選ばれるのは、余程の重犯罪のせいでなければ、あとは正直「他人の悪意」のせいでしかないんじゃ。

この映画では、妻の元夫が意地悪をして警察に送り込まれることになった、その釈放過程で市民権がないと発覚し、軽犯罪の前歴はあるものの、そのまま国外追放のいいカモにされた。

あいつが気に入らないから問題を起こしてやろう、何一つ不自由なく暮らす人がそんなイジメのような「ちよっとしたこと」の感覚で投げた悪意が、人ひとりの人生を完全に違うものにしてしまうことに彼らは全く気づいていない。

不法滞在や重犯罪者ならともかく、子供の頃からそこで育って普通に生きて来た人を「育ったふるさと」から追い出さなければならないほど、彼らは何かをしたのだろうか?
そこにいるだけで害悪をもたらしてると言える?

そんなモヤモヤと腹立たしい哀しい気持ちでいっぱいになった。

暮らす、ということは、そこに多くの交流や友情や愛情や人々の気持ちがあって、その人を愛してる人達がいるってこと。
それ全てを壊すほどそんなにあなた達は偉くて優れているのか?と思ってしまう。

なんか、残念で哀しい気持ちにしかならなかったなあ……
映像の美しさがさらに切なさを増幅させます。
えむ

えむ