デッカード

ブルー・バイユーのデッカードのレビュー・感想・評価

ブルー・バイユー(2021年製作の映画)
3.5
3歳のときに養子縁組されて韓国からアメリカに来たアントニオ。
貧しいながらささやかに幸せな暮らしをする彼に強制送還の現実が突きつけられる。

アメリカの国際養子縁組制度の事実が重くのしかかる。

今まであまり取り上げられなかったアジア系アメリカ人の姿も静かに語られているのも興味深い。

ベトナム系女性とアントニオの会話で、ベトナムと韓国がアメリカの介入した戦争を経験した国であることが語られるのはアメリカという国がアジアにしてきたことの示唆だろうか?

アメリカ人なのか?韓国人なのか?
自分たちをスイレンに例える話は人間としての根=ルーツと今のアイデンティティに振り回される彼らの心の揺れを表している。

映画は決してアジア系に限ったことではない国際養子縁組制度でたくさんの被害者が生まれていることを訴えかけている。この事実に驚いてしまった。

しかし、苦悩するアントニオを決して見捨てはしないアメリカ人たちもいる良心は心に響く。アメリカ人全てが他国民を踏みつけにしているわけではない、その希望。

家族愛があふれ出すラストに胸が締め付けられ、心が静かに悲鳴をあげた。
悲しく辛いが感動的な観る価値ある作品。
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