ねこねここねこ

沈黙のパレードのねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

うーん、容疑者Xの献身が良過ぎたのかもしれないけど、真夏の方程式、沈黙のパレードと次第にランクダウンしてしまった。

今回良かったのは草薙と湯川の絡みが容疑者Xの献身より多かったこと。もともと柴崎コウはドラマ用に出てきたキャラで原作にはいないし、原作だと草薙が大学の同級生として湯川への尊敬とも嫉妬ともつかない複雑な感情が描かれているのに映画ではそれが描ききれず残念だったけど、それでもすごく良かった。最後は映画館で涙を隠すのに大変だったなぁ。

今回は謎解きが以前より少なくて、町内の人々の共犯に近い形のせいか、それを描くのに時間を取られたのは仕方ないと思うものの、原作読んでないからわからないけど、どうなのだろう。気になるので原作も読んでみたいと思う。

15年前、殺人事件の犯人なのに完全黙秘したために罪を免れた蓮沼という男。蓮沼がまたも町内で可愛がられ、将来歌手として嘱望されていた沙織という少女を殺した犯人だとして検挙される。蓮沼の作業着に付いていた沙織の血痕という決定的な証拠があるにも関わらず、またしても沈黙を続ける蓮沼。
3年以上沙織の遺体が見つからなかったのに蓮沼の実家が家事となり、あっけなく沙織の遺体が見つかったことが契機となり、過去の事件も担当していた草薙は激しい葛藤を抱える。
その蓮沼が町内のパレードの日に何者かに殺される。絞殺された後もないのに窒息死した蓮沼。そのトリックをあっけなく解いてしまう湯川。よく思いつくなと思う。
蓮沼の死について沈黙を貫く人々。
沈黙罪というのもあるのか?と問う宮沢(吉田羊)の言葉はグサッと心に刺さる。

沈黙を続けた蓮沼に対し、蓮沼の死について沈黙を続けた町内の人々。
真犯人かと思われた新倉留美(檀れい)もずっと沈黙を続けてきたのだ。
蓮沼を追い詰めようとした沙織の乳祐太郎(飯尾和樹)は結局パレードの日にやって来た客の体調不良で追い詰める機会よりも客を病院に運ぶことを選ぶ。この辺りは葛藤があったんだろうけど、映画の中ではあっさりしすぎてて、え?いいの?って思ってしまったけど。でも良い人で良かった。

町の人にとって沈黙を守ることはまさに祐太郎の言うように必死なことだろう。自分達の良心との闘いでもある。一方で蓮沼の沈黙は生来のずるさ、図太さからのものであり、沈黙の質は全く異なる。
そんないくつもの沈黙がパレードのように連なっている。「沈黙のパレード」すごくよく出来た題名だと思う。

そんな蓮沼が新倉直樹(椎名桔平)が問い詰めたからといってあっさり罪を認めるのだろうか?どうせ殺されやしないとたかを括って逃げ切ろうとするのでは?という私が持つような疑問は蓮沼を追っていた草薙は当然持つわけで、直樹の供述に驚きながらも無理にそれを受け入れようとする。そこを鋭くつく湯川に「何も言うな」と詰め寄るシーンも良かった。被害が最小限で済むなら、これを納得するべきだと自分に言い聞かせる。そもそも警察が蓮沼を追い詰め切れなかったために起きた事件だと感じやりきれない思いがあるなら、なおさらそうなるだろう。

まぁ、ここまでは良かったんだけど、真相がわかって、えー?そんなことなの?😱となんか急に見る目が変わってしまった。
沙織はものすごく歌いたいわけじゃなかったの?デビュー直前に自己都合で歌手にならないと言い放ち、挙句留美に暴言?
なんか沙織が急に無責任で薄っぺらい女の子に見えて興醒め。周囲の大人達がこの子のために必死になる価値があったの?と思ってしまう。
一方で留美も、沙織を突き飛ばして殺したと思ってるのに、よく沙織の両親がやってる料理屋に行ったり談笑したりできるな、とここにも違和感しかない。
原作はどう描かれてるのかわからないけど、少なくとも映画を観ただけだと急にシラけてしまった。
こんなガッカリ感は容疑者Xの献身や真夏の方程式にはなかったのに。
というわけで、スコアはまたまた3以下。

出演は福山雅治や北村一輝、柴崎コウのいつものメンバーに加えて、沙織の両親にずんの飯尾と戸田菜穂、歌手にするために沙織のレッスンをし、可愛がる夫婦に椎名桔平と檀れい。蓮沼にオーファーザー!やグラスホッパーでいい味だしてた村上淳。その他吉田羊、田口浩正など。
俳優陣がきちんと演技出来るって当たり前だけど本当に大事。ロクに演技できず、棒読み感半端ないアイドルなどは、それだけで映画が台無しになるからね。

それにしても若い頃から知ってるこの人達、当たり前だけど歳取ったなぁって思ってしまった。福山雅治も相変わらずカッコいいんだけど、やはり顔の皮膚というか、口元たるんできたなぁとか、檀れいもライトでかなりカバーしてるんだろうけどそれでもほうれい線目立つよねとか、椎名桔平なんか首元シワシワじゃん、とか、変なところにばかり目が行ってしまって、集中しにくい(笑) 自分も同じく歳取ってるのに、棚に上げて微妙にショックを受けたりして。
飯尾和樹、意外と演技上手くて好き。この人が歳とっててもそんなにショックを受けないキャラなんだよね。カッコいいとか美人とかってそういうところ厳し目になってしまうのかなぁ。あ、飯尾さんごめんなさい🙇‍♀️💦 でも戸田菜穂は相変わらず綺麗だったなぁ。

これは原作を読んでみよう!
容疑者Xの献身の時には先に原作を読んでから観たけど、今回は逆。これやっちゃうと困るのは、原作の中の登場人物が全部映画の俳優の顔になっちゃうことだよね。