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沈黙のパレードのeichanのネタバレレビュー・内容・結末

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

一人の悪鬼に、善良な人たちが振り回されて最終的に凶行に至るストーリー。

湯川先生は相変わらずのキャラで、刑事とのやりとりもお約束感があって良い。
推理ものはたまに見るが、この作品も多くの人の思惑が絡み何十にも真相が守られているので、どんどん解き明かされていく展開は面白い。個人的にはもっと複雑でも良かったと思う。想像を超えると言うほどではなかった。

それより残念だったのは、ガリレオシリーズの醍醐味である物理要素がほぼゼロだったこと。それだけで湯川先生の人柄の良さは伝わるが、先生や映画全体の魅力が激減しているように感じた。
液体窒素の部分が唯一の要素だが、そこを解き明かすのにもっと時間を割いても良かったのではないだろうか。

そうして削った時間で人間ドラマを描いていく試みなのだと思うが、私は登場人物にも共感があまりできなかった。
特に「自分が犯人だと自供させる」ためにみんなで大掛かりな計画を立てる気持ちに寄り添うことができなかった。そんなことして何の解決になるんだろうと。同じ苦しみを味わわせるだとか、いっそのこと殺害する目的の方が納得できる。誰も冷静になって止める人がいなかった故の悲劇という意味ではリアルなのか。

私に共感性がないのは認める。ただしガリレオシリーズでは視聴者も作風的に合理的に考える傾向になると思うので、物語がキャラクターの感情を含めて合理性を欠いたものにならないよう気を配って欲しかった。
原作を読むともしかしたら書いてあるのかもしれないが。

結論を言うと、全く破綻した物語でなければ不快感が漂う物語でもないのだが、今までのガリレオシリーズの映画やドラマの良作たちと比べると、この作品は私とは趣向が合わなかったと感じた。
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