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ミルコのひかりのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ミルコのひかり(2005年製作の映画)
4.1
ほとばしる少年の感性に心が開かれる。世界はこんなに鮮やかに彩られ、手触りがよく、季節の香りがして、甘酸っぱくて、愛には温もりがあり、心に響く音に包まれている。イタリアの音響デザイナー、ミルコ・メンカッチの才能溢れる少年時代を描いた実話。五感を開いて鑑賞。「今」に集中し、「今」を好きになると、世界は豊かだ。(本作の音響も担当)

ミルコ少年は入れられた厳しい全寮制の学校で、自由を得るために、創造する喜びを知っていく。ミルコの生み出す世界は想像力に満ちていた。レコーダーで音を拾い、編集し、世界を再構築する。規則に外れたと叱られても、何かを生み出したい気持ちは押さえられない。短い詩に始まり、ファンタジーの長編に至った。

そんなミルコを遠巻きにしていた少年たちもミルコが生み出す世界に惹き付けられ、一人二人と参加者が増えていく。何かを創造することは一人の喜びもあるけれど、みんなで力合わせて作り上げる喜びはより大きい。そしてそれをたくさんの人に楽しんでもらえたら、クリエイター冥利に尽きる。

少年たちは創造の翼を広げ、精神の自由を得ていく。

一つ気になったのは、学校の改革が外圧によったこと。あれも実話なんだろうか。この外圧部分が実際にミルコと関係なければ入ってなくても良いようにも思えた。

感性は生まれもった才能だけでなく、磨き伸ばせるのだと、その芽を摘まないように、創造を重視する教育って大切だと思った。大人にはもう感じられなくなっていることでも、子どもは五感で掴んでいき、誰かに感動を伝えようと五感で表現する。すごく素敵なこと。


☀️この作品の詳細は英語のwikipediaが日本語のより良い。私もレビューを英語のwikipediaの考え方に従った。この点は日本は遅れていると思う。才能あるアーティストを紹介するのに不要な形容詞をつけるから。作品の英語版wikipediaには一言も、本人の英語版wikipediaには探さないと見つからず1ヶ所触れているだけだった。

先入観は心の目を閉じてしまう。
原題『空のように赤い』を邦題に変えたように。
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