真田ピロシキ

人質 韓国トップスター誘拐事件の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.3
ファン・ジョンミンの出演作ネタが散りばめられていると言っても顔をよく覚えていなかったので作品名は思い当たってもピンとこない。『ただ悪より救いたまえ』が1番覚えている。ただその辺はニコラス・ケイジの『マッシブ・タレント』がケイジフリークでなくても全然楽しめたように、鑑賞に当たっての前提条件にはならない。

気になったのは脚本のリアリティで、ファン・ジョンミンはただの俳優なので特別腕っぷしに優れているわけではない。そんな彼が誘拐犯を出し抜くのだから、相手はそれ相応の強さでないと成立しない。掴みは良い。コンビニ前に止めたファンの車に群がって「誰とヤったんだ」と絡んでくる下卑たチンピラ仕草。誘拐されてからも奴らの挙動はチンピラを超えない。ムショを出ても仕事も金も居場所もない世の中に失望し切った奴らの刹那的な犯行には真実味があり、ファンの前に誘拐されてた女の人が30回以上面接してやっと就職できたと言ってたこともこの物語で描かれる犯罪のどん底感を強める。一味の大男やハゲた人なんか『ファーゴ』にでも出てそうで哀れみを覚える。この犯人たちなら泥臭く世相を訴えかけるものもある物語となっていたかと思う。

台無しにしてるのは誘拐犯のリーダー。これが前髪を目元近くまで下ろした若いサイコ野郎で異様に頭が切れる韓国ドラマや映画でありがちな奴。君はジョーカーでも気取りたいのかな?そのくせ手下にしてるのはしょーもないチンピラで心酔と言うか畏怖してるのは先に述べた大男やハゲたオッサンのような知的障害がありそうな人たちで、副リーダーの坊主男には刃向かわれる。すごいのかへぼいのかよく分からん奴。警察に拘束されてるのを爆弾ドカーンもなーんかジョーカーみたいでどっちらけ。これに限らずあんな作り手のお膳立てで八百長無双しているつまらない奴を真似するのはやめるんだ。一度は逃走に成功したファンが再び捕まるのは助けを求めた先の爺さんが誰かが自分を殺しにくる妄想に取り憑かれてて閉じ込められたからという。頭のおかしな人を出しさえすれば何やっても納得すると思ってます?これは差別してんじゃないの?

あまり俳優としての演技力を活かした機転もなく拍子抜け。ラストで事件を映画化してて見に行ったら犯人役にそっくりの新人俳優を使われてて言葉を失うのもおかしいわ。PTSDもんでしょう。韓国芸能界の皮肉だったりする?ファン・ジョンミンなら普通に『国際市場で逢いましょう』でも見とけばよかった。釜山には2回行ってるし。