このレビューはネタバレを含みます
「猿の惑星」も本作で7本目にあたり、壮大さもあり、スター・ウォーズが「スペースオペラ」ならこちらも「モンキー・オペラ」だろうか。本日時点で10作(9作公開+2024公開作)存在するらしい。
日本では「シン・シリーズ」で過去の名作やヒーロー物を現代の社会背景や撮影技法を駆使して次々とリブートさせているが、この風潮は世界的でもあるようで、過去の大作・名作のリメーク(リブート)が目立つ。
オリジナルが1968年に描いた3978年。つまり約2000年後の地球を描いた作品で「2000年も経てば猿も進化するだろう」と当時は考えたかどうかは定かではないが、現在2023年から考えても猿が勝手に進化する事がないだろうと推測はできる。
本作撮影開始の2010年でもそれは変わらないだろうから、オリジナルとも辻褄を合わせながらの脚本は苦労に絶えなかったことだろう。
——で、おおかたの予想どうりここでは薬品使用がその答えになっている。
人間には耐性が出来てしまい効果が限定的、毒性の強いウィルスでもあるアルツハイマー用薬ALZ112は猿に限っては有効性がある——としている。
ただしこの「脳の能力活性につながるが副作用もある」とする設定は既視感があり、それは「アルジャーノンに花束を」なのだ。
そう思い当たってからは本作鑑賞中ずーっと「アルジャーノンに花束を」を意識で引きずることになった。
そしてさらに余計なことも考えてしまう。それは猿の寿命は概ね20年程度なのだが、オリジナル1作目ではジーラ博士、ザイアス博士などは人間で言えばゆうに還暦を迎えたような貫禄で登場するが、では猿がどこで「寿命のばし」に成功したのだろうか。それとも猿界では18才くらいで老境に達するのだろうか。
今回薬品による知能向上としたが、寿命が伸びる要因は描かれていない。これは人間と交配しないかぎり難しいのではないか。また、ブライトアイズの遺伝でシーザーは知能が高いが、薬品で知性向上を果たしたブライトアイズの体内でそんなに早くDNA構成に変化が出るのだろうか——などなど。
本作は「新シリーズスタート」という空気感もあり監督のルパート・ワイアットは「いかに続編へつなぐか」に腐心したのであろう事は予想できる。(次回作までワイアットが撮る了解はこの時点ではあったようだが)
ウィルはシーザーを「研究対象」と捉えている側面があるので、シーザーとそこまでの愛情の絆が保てていない。そうなると続編以降でウィルとの絆を活かしたエピソードも期待出来ないだろう。
また、かなり強引な黒木メイサ風の獣医キャロラインの登場も観客に媚びているようで気に入らない。オリジナルシリーズは哲学性をまとっていたせいもあり、そこはクレバーで余分な「エンタメ性」を込めなかった。時代といえば時代だが、そこは本新シリーズを観終わってから判断をしてもよいと思った。