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ル・ミリオン 4K デジタル・リマスター版のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.5
【これが猥雑になるとフェラーラの『Go Go Tales』】
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のルネ・クレール作品『ル・ミリオン』を観た。驚いたことにアベル・フェラーラ『Go Go Tales』と話が一緒であった。

パリの屋根、模型、セットの複雑怪奇な屋根を縫うようにカメラが移動し、お祭り騒ぎな窓の下にフォーカスが当たる。借金まみれで、近所の人に追われている男ミシェルはある日宝くじが当たる。有頂天になり、酒をご馳走したりするのだが、肝心な宝くじがなくなってしまう。どうやら上着のポケットに入れたはずなのだが、その上着がどっかにいってしまう。アベル・フェラーラの『Go Go Tales』が『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』の映画化と聞いた時、「そうか?」とずっと思っていた。本作を観ると、明らかにアベル・フェラーラはラスト含め『ル・ミリオン』をやりたかったんだなと気付かされる。そして、本作は修羅場劇として動線の作り方が面白い。激狭な階段を上昇する。背後の窓から警察が現れ、追いかける。死角を使って激突、交差を繰り返す。終いには、上着は宙を舞い、窓から逃げていく。

映画は寓話だ。あまりに滑稽な宝くじが発見される場面。あれほど散々探し回ったのに、あっけなく見つかる様子からはどこかカタルシスを感じる。しかも、これが妙にリアルで、我々もモノをなくして散々探し回った挙句、意外なところから出てくる感動がこの映画に詰まっているのだ。この感動が後にウィレム・デフォーの演技に継承されると知ると、胸が熱くなる。
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