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殺人美容師 頭の皮を剥ぎ取りますのhorahukiのレビュー・感想・評価

3.6
ヘアスタイリスト×ホラー。

美容師だった女性監督による頭皮剥ぎ剥ぎ映画。眠らせた客の頭皮を剥ぎとって、そのまんまカツラとして被ることに喜びを感じる美人美容師が、友人の結婚式に招待されたせいで、元々狂ってたのが更に狂っていく…。オシャレ×狂気なサイコホラー。

『悪魔のいけにえ』から着想を得て製作された同名短編の長編化作品。監督が「レザーフェイスのスタイリスト版」だと語るように、主人公クレアは客の皮を剥ぎ取っては被り、それを戦利品のように地下室にコレクションしている。レザーフェイスと違うのはその部屋がなかなかにオシャレなこと!😂さすが美容師!!

短編と同様な頭皮剥ぎシーンをプロローグに配置し、そこからは殺人美容師の内面にじっくりと寄り添うような、殺人鬼側の主観に焦点を当てた展開となっている。ただ、彼女が殺人鬼になるに至った経緯をわかりやすく説明するような単調なものではなく、彼女の生い立ちや願望、なぜ「他人を被るのか」を薄らと浮かび上がらせるような婉曲的な内面の解剖。

『血ぬられた墓標』や『三人の女』等々のように、同一人のあり得べき可能性を別人格として表現し、スプリットスクリーンでその対称性・非対称性を執拗に反復する。多くは語られないながらも、過去に起因する孤独から「家族」を求めるクレアは、家族を持つ他人と同化するために「被る」行為を繰り返す。ほぼ同じような過去を持つ友人の現在と自身の比較から、更に孤独が重くのしかかり、物語が動き出す。

本作は宗教要素はないながらも主題が『セイントモード』と近く、批判の目を救えなかった社会側に向けていて、ほぼ同時期に新鋭女性監督から同種テーマの作品が生み出されているのが面白いなと思った。
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