未来

ブレードランナー ファイナル・カットの未来のレビュー・感想・評価

4.1
映像、音楽、提示するテーマともにどれも素晴らしく芸術的なSF。
舞台設定や衣装、町並みなどのセットの完成度が高く、東洋の要素を組み込んだ荒廃した近未来はとてもかっこよかった。しかし近年のSF映画に見慣れてしまっていると少し設定に無理があると思ったり弱いと感じたりする部分もあると思う。
演技はみんな素晴らしく、特に主人公を演じたハリソン・フォードとレプリカントのリーダーを演じたルトガー・ハウアーにはとても引き込まれるものがあった。
ストーリーはわかりやすくテンポも良く見やすかった。

レプリカントの反乱と人間による虐殺という今作のテーマは人種差別問題や奴隷制度に置き換える事もできると思うが、私は「高等生物の出現と種の存続」という部分にこの映画は重きを置いていると感じた。人間に対して反乱を起こす機械という構図はよくSFの創作でよく題材になり、殆どの場合機械(AI)側が悪という形に定義される。しかし今作の機械、レプリカント(人間と同等の肉体と頭脳を持った生物が感情や思考を持ってしまったアンドロイド)の場合、奴隷からの開放や自由を求めて反乱を起こすのは当然のことであると思う。
その場合それを止めようとするましてや抹殺しようとする人間は悪になるのか。新しい種族の出現から自分達の種を守ろうとするのは生き物としての種族保存本能が働いた結果である。それが自分たちが生み出したものであるならなおさら危機感を持つだろう。そのためレプリカントと人間どちらが正しくてどちらが間違っていると定義するのは難しい。しかし映画内で描かれるデッカードとレイチェルの関係性はレプリカントと人間の「共存」という新たな解決を提示していると考える。
未来

未来