アーモンドフィッシュ

最後の決闘裁判のアーモンドフィッシュのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.5
久々に考えさせられる映画を見たような気がします。

あまり女性にはオススメ出来ない作品かもしれません。映画の中心となるレイプシーンはもちろんだけど、その後女性が絶対されたく無い事ばかりが連続して起こるからです。特に被害者のマルグリッド(ジョディ・カマー)が勇気を出して夫のカルージュ(マッド・デイモン)に凌辱された事を告白しますが、それを聞いたカルージュはある事をマルグリッドに要求します。それはあまりにも残酷で冷酷な要求で私は恐怖と気持ち悪さを感じました…だから女性は覚悟して観る必要がありますね(映画と割り切れる人なら問題無いです)

映画は三つの賞に分かれていて、実際に起こったレイプ事件を被害者の夫、加害者(ル・グリ/アダム・ドライバー)、被害者の3人の視点からそれぞれ描いています。視点が変わると人物像が全く変わるもので、1章を見ると、カルージュはちょっと暴走しがちで不器用な人だけど妻想いで友人想いの優しい男、ル・グリはクズ男。2章の途中まではル・グリって凄く友人想いで頭が良くて努力家の立派な人、カルージュはただ傲慢なだけで敵を作るのは自業自得だって思うように作られています。ですが、結局はル・グリやカルージュは自分の尊厳や名誉のためだけに戦い、マルグリッドやその子供のことは無視した自分勝手なことでいがみ合うのです。時代が時代だから仕方ないか…
 これで思い出したのが前に見たホラー映画の「ミッドサマー」、男性が無理やり女性とセックスさせられるシーンがあるのですが、私は感想で「つい笑ってしまいました!」てツイッターでは書きましたが、よく考えたらこれも男性のことを全く無視した自分勝手な視線なんですね。深く反省…

最後の決闘シーン、勝者が大歓声に包まれるところはあまりにも虚しかったです。本来こういう雌雄を決する映画は映画内の歓声が観客の声を反映するものだけど今回は大歓声と自分との間に壁みたいなのができましたね。

それにしても約600年前女性に人権なんて存在してなかった時代に自分の尊厳を守るために世間や権力と戦った女性が実在したことは決して忘れてはいけないです。彼女のような勇気ある人がいたから私たちは胸を張って強く生きていけるのです。