さく

最後の決闘裁判のさくのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
5.0
80歳を超えるリドリー・スコット御大が、またとんでもない名作を世に放ってきました。「私を呼ぶときは“サー”と呼べ」と言うのは自分自身のことでしょうか。

まず『羅生門』的な仕掛けはおいておくとしても、長尺なのに全く隙がないです。すぐに集中が切れる私でも最後の最後まで緊張感を保てました。映画を撮る技術的なものを語れるほどリテラシーを持ち合わせていないので、具体的な説明はできませんが、確実に「巧い」のだと思います。私如きボンクラがどうこう言えるレベルを超越していると思います。

ここから先ネタバレ入ります。

さて、羅生門的アプローチの話ですが、私は以下のように解釈致しました。かなり妄想も入っているので、「何を言っているんだこのアラフォーの小太りのおっさんは?」と言われそうですが、全開でいきます。

私は、結構難解な仕掛けが沢山ほどこされると見ました。単純に「三者三様。真実は藪の中」みたいな作りに思わせておいてかなり捻ってある。だって深読みしないで見流していたら、「結局、三人の違いは何?」っていうくらい違いがわかりにくく描かれてますよね。正直、私は「え? 結局何が違ったの?」とまずはなりましたよ。

だって1番重要に思われる強姦に関する三者の見解にほぼ差がないんですね。ここが、はっきりとわかれて例えばル・グリ(アダム・ドライバー)の回想シーンでは、マルグリット(ジョディ・カマー)が好意的な態度を露骨に取っていて、他の二人の回想シーンとは明らかに異なる…とかなっていれば、安直なメロドラマみたいになりますが、そうは"サー"が卸さねぇ。

で、何が異なっているかと言うとマルグリットとカルージュ(マット・デイモン)の関係性です。これは恐らく、誰かが意図して証言を変えているのではなく、それぞれの人から見た二人の関係性を表している。マルグリットから見たカルージュは大分自分から心が遠ざかっているというのが、帰って早々にハグもせず家に入るカルージュの行動から読み取れます。

ここからが複雑で私も消化しきれていないのですが、最後の決闘のシーンでル・グリが殺されるシーンでマルグリットが涙を流す。ここは、強姦されたという憎しみと同時に自分のお腹にいる子の父親はル・グリという事実…自分の子の親が目の前で殺される。この後、勝利を収めたカルージュのパレードみたいなシーンにつながるのですが、どう見てもマルグリットが嬉しそうにしてないんですよね。ずっと物憂げな表情。

時代背景やこのとき置かれていた女性の立場などから、ぐっと感情を押さえ込み耐えるマルグリット。ここら辺の解釈が間違っていなければ、マルグリット役のジョディー・カマーの名演です。

何か他に重大な見落としがあるか?

完全に誤読してるかもしらませんが、「これ3回やった意味は?」という疑問と、ラストにかけての役者の演技に「?」と思う点があったので書き殴ってみました。
さく

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