小町

最後の決闘裁判の小町のネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

中世ヨーロッパで実際にあったある事件を描く。三者の視点から証言が変わるいわゆる“羅生門形式”で、それぞれの視点が終わるごとに登場人物への見方が変わる。とにかく面白かった!!

まず中世ヨーロッパの世界観が確立されているのが良い。700年前の暗くて寒いザ・中世フランスでは、パリですら薄汚れた村。この没入感・隔たり感のある映像と音楽には、映画館で観る醍醐味を感じた。

そして中世的価値観。名誉が最優先、女性は財産で、傷付けられるのは所有者(夫)への侵害行為だとか、神の意志が全てを支配する(決闘で勝つのも神の意志ね)などなど、現代から見ると野蛮と思える言動がまかり通る。
レイプ後も性交を強要する夫、嫌がるのは淑女としてのポーズと解釈するレイプ男、どちらもアウト。性交で絶頂に達せれば懐妊する説も、科学という枕詞の怖さを感じる。ツッコミ所満載であるが、「ダメよダメよも好きのうち」等という妄言が流行した近代日本を思うと、現代もさぞ野蛮なんだろうなーと情けなくなる。

一番好きなのがこの3部構成で描かれる男の「分かってない感」。男性目線で描かれていた俺凄いが、妻目線では大したことない事だったとわかる。寛大な台詞を吐いたのは自分だとお互い思い込んでいたが、妻目線では大した事ない描かれ方だったり。妻夜這いもただの妄想だったり、ディテールが変わるのがすごく楽しい。

抑圧されていた女の権利の話、というのもそうなんだけど、堅苦しい話じゃなくて、どこか滑稽である意味面白い話だった。

しかし、美女で才女で気立の良い女性だから物語として成り立つけど、そうでない女は物語にも選ばれないだろうな。女性が聖女的で、それもまた都合のいい妄想では…。
小町

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