るるびっち

最後の決闘裁判のるるびっちのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
3.9
『羅生門』のオマージュというよりアンチテーゼ。
昔なら男が女を襲ったのは、実は悪女で誘惑されたから・・・というのも成り立った。
運命の女とか魔女とか悪女とか誘う女とか、それらは全て男性側から見た都合の良い解釈。
それで成立するのは、女性側の意見がない時代だから。
そんな男性映画『羅生門』に対するアンチテーゼ。
女性側にしたら、「そんな訳あるかい!」という話。

自信過剰の男ほど、思い込みと自惚れが強い。
可愛い子が微笑んだら、気があるなと早合点する。
女性側にしたら、偉そうだし下手に絡まれて面倒臭いことにならぬよう、防衛として愛想よく振る舞っているだけ。
防衛の笑顔を、好意と勘違いする能天気バカ。
そいつが女性を襲った時、相手が笑顔で誘ったと責任転嫁する。
挙げ句に、魔女・悪女扱い。

本作は、ジャイアンとスネ夫がしずかちゃんを困らせる話。
しずかちゃんにとっては、どっちもクソ。
腕力だけが頼りの、不器用な俺様ジャイアンの亭主。
上司に取り入るのが上手く、抜け目なく金勘定が上手いスネ夫。
ナルシストのスネ夫は、しずかちゃんが僕を好きにならないハズがないと亭主の留守に訪問する。
妻がスネ夫に襲われて、訴える。
どちらが勝とうと、しずかにとったらジャイアンとスネ夫である。
決して出来杉ではないのだ‼(のび太は論外)

今まで男性視点でしか語られなかった物語を、女性目線で語り直す。
最初はジャイアン目線から。
次にスネ夫目線で。
最後はしずか目線。
すると、あ~ら不思議😜
今まで、河島英五の「時代おくれの男になりたい〜♫」タイプのジャイアン型ヒーローの亭主が無神経バカに。
サクセスヒーロー型のスネ夫が、妄想身勝手バカに見えてくる。
どちらもある種の男の理想だが、女から見ると迷惑な奴ら。

『羅生門』を含め、真相や如何にという映画が幾つかあったが、いずれも男性目線で女性目線が無かった。
後半のエロ坊主、エロ裁判官によるセカンドレイプ紛いの尋問を含めて、いかに世界は男で回っているか。
天動説から地動説に変わったように、今やっと、映画も社会も女性目線に気づいたのである。
運命の女なんか居ないのだ。目を覚ませ、地球は丸いんだ。端っこを象が支えているのじゃないんだぞ‼
未だ時代遅れの騎士道にロマンを感じる男たちよ。彼らのヒーローこそジャイアン型の夫なのだ。イーストウッドにも憧れるなよ。

中世の物語だがMe Too運動の盛んな現代にこそ、作られるべき映画だ。
つまり、中世と現代と男達の考え方はそんなに変わっていない。
コンビニの女の子がニコッとした時、俺に気があるなんて勘違いしたら、逆さに吊るされますよ!!
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