うみぼうず

最後の決闘裁判のうみぼうずのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
3.5
武器を渡す係などをみて、ジョセフとワムウの戦車戦を彷彿とさせてくれて、史実に近いんだなと荒木飛呂彦先生に感心してしまった。

時代とは言え、全く何の根拠もないことを「科学」と言ってしまえるこの社会は怖いなと思うし、自分の正しさを主張しながら地に伏してしまった人達もたくさんいたんだろうな。
社会的弱者が声をあげる勇気は、700年後の現代でもなお残っている根深すぎる問題。この時代の女性は"物"としか見られておらず、言ってみれば牛や馬と同様。もう少しその点に焦点が当たったらよかったかもと思う。中世の騎士と領主の関係や女性軽視が混じってしまい少し散漫な印象だった。

評価が高いことだけ知ってて前情報なく観始めたが正直、1章2章はもっと短縮させて3章だけでも良かったのでは?と思う。もちろん前の章があるから3章が活きてくるのは承知の上でだが、本人の主観視点で"真実"が変わるとはいえ、繰り返しは抑えたい。また、都合の良い妄想とも言えるのでそれぞれが自己中心的にみえてくる。

しかも心理描写がかなり緻密ではあるが、感情を発露させずに黙る描写や無表情がクローズアップされるので、読み解きづらさはある。それは主演の男2人もそうだが、特にピエールの周りの女性は何度も顔のアップはあるがセリフはなく、マルグリットに恐らく共感しているだろうなと微かな推測しかできない点は勿体無いと思う。

前情報無しで主演も誰か知らなかったが、マット・デイモンの何考えているか分からない表情はハマっていたなと思う。あとはベン・アフレックの小憎らしいけど憎めない感じは最高。戦場の奥で戦っている人々や召使いの挙動なども完璧で、映っていない部分までこだわるのはさすが。
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