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最後の決闘裁判のbluebeanのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
中世が舞台ですが、現代にもいまだに通じる、男性社会で抑圧される女性の姿が描かれています。男性達が、自分勝手な都合の良い視点から女性たちを眺めているため、そんな女性の生きづらさを全く理解することがないという構造が、巧妙な演出によって表現されています。

複数のキャラのそれぞれの視点から同じ出来事を繰り返し見せて、その違いから人間の解釈のずれを表現する『羅生門』スタイルの構成です。羅生門と違うのは、それぞれのシーンの違いが気付くかどうかのほんのわずかなもので、それがリアリティを高めています。女性視点の「ほぼ真実」の描写に対して、いかに男性陣の視点がエゴで歪められて都合よく物事を解釈しているか、それが女性をどれだけ苦しめているか。それが演出のリアリティによってかなり説得力を持っています。

最後の決闘シーンも上手いです。激しいバトルも含めて映画的に盛り上がる展開を見せつつ、そこに男のエゴによる無意味さと馬鹿馬鹿しさを重ねることで、観客がまったく冷めたままそのスペクタクルを見ると言うシュールな構造がとても面白かったです。

舞台の中世フランスの表現もなかなか良かったです。当時のパリの田舎ぶりも含めて、中世社会の閉塞感が伝わってきました。
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