ジャッキーケン

最後の決闘裁判のジャッキーケンのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.3
現代映画で蘇る真の羅生門

武闘派リーダー筆頭格のマット・デイモン
共に戦場を駆け抜けたアダムドライバー
マットの嫁でありレイプ裁判を告発するジョディカマー
この三人を決闘裁判へと誘う真実を三人の視点で描いたリドリースコット版羅生門

2時間半真実と向き合いつづける堅くなりがちなストーリー構成に「ナポレオン」でも見れるであろう徹底的な時代設定、戦闘シーンの血しぶきダイナミック。息を呑むどんでん返し。真実と嘘、視点から食い違い惑わされる視聴者。中々に翻弄された

友を引き裂く権力
その贔屓な理不尽に立ち向かうマット・デイモンがかっこいい
しかも権力の権化ベンアフに物怖じしない兵士としてのプライドを戦場のみならず法廷、権力社会でも牙を向く
温厚そうなルックスとは裏腹に攻撃力高めのマットデイモンが男として見るとアツい

魅せられた権力と取り憑かれる魅力
この中で1番のクズはアダムドライバー
女好きで日々ベンアフレックと乱交パーティに明け暮れマットの嫁にレイプまで
憎めないカイロレンとは程遠い憎たらしさ
レイプシーンも単なる暴力的な演出ではなくそれに行き着く過程をサラッとやることでそのシーンでさえ上手いと思わせるリドスコ

声を上げる現代社会にも通じる出立ちジョディカマー
この映画のジョディカマーがそもそも魅力的すぎてクズだけど襲っちゃうアダムドライバーには同情、その妻を持つマットデイモンに嫉妬するほど
1番の真実はこの視点である面白さ
人によっては1番のクズはコイツやろと言いたくなる気持ちもわかる。ただ男として見るとジョディカマーに人生狂わされるのはある意味本望だしなんならメチャクチャにされたい

オリジナルの羅生門こそ正直エンタメ系黒澤映画が好きな俺からしたらハマれなかったが本作はそんな頭の弱い俺でもガッツリ楽しめる初心者向け羅生門

それでいて中世ヨーロッパの徹底した雰囲気と合戦シーンは少ないとはいえ尖りに尖ったバイオレンスは物語を引き立ててくれる

クライマックスのマットデイモンvsアダムドライバーの決闘もスリリングで馬上から思わず声を上げるほど肉体が悲鳴をあげる痛々しいバイオレンスが最後に至るまで痛感するほど逞しいクオリティ

「ナポレオン」を見る前にいい肩慣らしになる中世リドスコ映画の傑作