haru

最後の決闘裁判のharuのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.5
それぞれの真実。

騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の友人ル・グリにレイプされたと主張。ル・グリが無罪を主張したため、カルージュは愛する妻を守るべく、決闘裁判を申し込むが…

「ナポレオン」のリドリー・スコットによる、「不器用な男が愛を貫く生き様」からの、「愛する女性を救い出すヒーロー」からの、「クソ男たちによるクソどうでもいい争いに巻き込まれた女性」の話です。
一連の事の顛末をカルージュ、ル・グリ、マルグリットのそれぞれの視点で描いている本作。3回も同じ内容をやられるとさすがに飽きそうなんですけど、視点が変わると同じ行動なのに意味が変わってきて、とても面白かった。特にカルージュのキャラが全然違いまして、本人的には「たまに少々感情が先走ってしまうこともあるけど、なんだかんだ妻への愛に溢れた優しいオレ」なわけですが、元親友からすれば「政治も我慢も知らねぇバカ」、嫁からすれば「自分のプライドを守ることしか頭にないバカ」だったりして、演じるマット・デイモンめちゃ上手ぇ!です。たぶん本人的には良い感じに善人演じられてるんでしょうけど、バレバレですから!ヤバいとこ全部出ちゃってますから!
一方上司ピエール伯に媚を売りまくって出世していく姑息なクソ男ル・グリ(カルージュ談)は、実は裏では親友カルージュのフォローをしたり、仕事もそこそこ真面目に頑張っている。彼が出世したのはゴマスリだけでなく、教養があったからなわけで、実は普通に優秀だったりするのです。そんな彼は自分と同じく知性と美貌溢れるマルグリットに恋をします。しかも会うたびに彼女も意味ありげな視線を送ってくるし、もうコレいくしかないでしょ!と思いきや。実はマルグリットからすれば、視線の意味が全く違ったりするのです。
そして事件が起こるのですが、声を上げるマルグリットに対し、同じ立場の女性陣からも非難殺到。義母には「我慢が足りない」とか言われる。いやいやむしろマルグリットは充分我慢していました。しかし虐げられる側がそれに甘んじてしまうと、状況は変わらない。つまり彼女の行動は、まさに歴史を変える出来事。それなのに裁判でも執拗に責められるマルグリット。もう見てられないほど辛い。おい、男2人!愛とか言ってんなら助けろや!
ところで3人の視点において、一切キャラがブレなかったピエール。彼だけは誰もが認めるクソ男ということです。
haru

haru