くもすけ

ボブ・ロス 楽しいアクシデント、裏切りと欲のくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

なんとも気がめいる作品。
ボブ・ロスの存在はこのドキュメンタリー見てはじめてしった。
ボブ・ロスは乾燥を待たずに絵の具を重ね塗りする「ウェット・オン・ウェット」と呼ばれる伝統的な画法を用いて、大人気番組のホストとして活躍した。

95年にリンパ腫で死去してから、会社Bob Ross, Incの経営は生前からのパートナーであるコワルスキー夫妻が独占するようになる。息子や関係者は夫妻を相手取り訴訟に持ち込むも資金不足で上訴が叶わずあえなく敗訴。

番組に引っ張り出された息子が、一切の遺産を受け取らず、またロスの名前を使った商売もできないというのは、酷なはなし。一方ボブ・ロス自身自らの魅力を最大限利用して、コワルスキーらと組んである時期まで蜜月な関係を築いたのもまた事実。

3万点あるとされる絵画については会社が所有し、市場にほとんど出ない。相場価格は数千から1万ドルほど。現在会社の経営は娘?のジョーンコワルスキーが担い、よりマスマーケティングな売出し中。

なぜこんなにあたったのか。映画ではもっぱらボブの人格に焦点あてていて、それはそのとおりだろうが。ニューエイジとか自己啓発の流れに位置づけたりするでなく、そそくさと骨肉の内輪もめへと関心を移していきげんなり。
番組の参考にした先達の絵描きを反面教師に、女性視聴者を想定した、というのはおもしろい話。
「幸せへのまわり道」として映画にもなったMister Rogers' Neighborhoodのロジャーズと似た、スローテンポの喋り方が受けたのだろう、との指摘もある。

コロナ禍で家に閉じこもった人がYou Tubeにあがっている動画の再生数を上げている、という話のあとに、ASMRとしても効果がある、と言われると、なんともはや。
コワルスキーは言う。「ボブはある種ASMRのゴッドファーザーだったのです」