三樹夫

カード・カウンターの三樹夫のレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
4.0
刑務所から出所した男がカードギャンブルで生計を立てるが、男は捕虜収容所で罪を犯し日々悪夢にうなされていた。ギャンブルブローカーのラ・リンダからポーカーのデカい大会への参加を持ちかけられる一方である若者と出会い、捕虜収容所での害悪ともいうべき自分に消えない罪を負わせた男への復讐を持ちかけられる。

密室、病んだ男、日記、独白、贖罪とポール先生のロイヤルストレートフラッシュみたいな映画となっており、前作『魂のゆくえ』の主人公の職業が牧師からギャンブラーに変わったぐらいでストーリーはほぼ一緒。トラヴィス化をくいとめてくれるだったり、『その男、凶暴につき』の主人公の妹のように虚無的な世界における主人公に残された人間性の象徴としての女性(この映画ではラ・リンダ)が出てくるし、こんな悪がこの世界に存在することは許されないという対象の男(この映画ではウィレム・デフォー)も出てくる。この世の悪マンは醜怪な悪をばら撒いときながらトカゲのしっぽ切り、挙句の果てに自己責任だとほざきやがった。この世界は腐っている…俺が浄化しなければならない…
刑務所、カジノ、モーテルと場面が変わろうが全部密室で、全場所で主人公が病んでいるという、どこを切り取ってもポール先生の映画だ。密室からは逃げられず、ずっと精神は密室に閉じ込められている。外に出たかと思えば車に乗って移動するぐらいで、結局密室じゃねぇかとなる。密室に閉じ込められた男の内省的な独白が続き、他者と会話することもなくひたすら日記を綴る。つまりいつものポール先生の映画で、当然主人公の目は死んでいる。さらにねぐらにある家具は全て白い布で覆っており、こいつヤベェよ…感が半端じゃないぐらい漂うが、ウィレム・デフォーお前もか。誰も彼も病んでいる。
この映画でやたら目を引かれるのはミスターUSAで、星条旗フッションに身を包んだアメリカ国粋主義の右翼のウクライナ出身と無茶苦茶だが、軽々しくUSA! USA!と叫ぶのが、いや主人公の体験を見てるととてもじゃないがUSA万歳なんてできないんだけどという対比になっており、これ以上ないぐらい軽薄なキャラクターとして存在している。ミスターUSAは主人公のように真の闇に触れることはなかったのだろう。それはそれで幸せだと思うが、頭空っぽのバカがお国万歳やってるだけであり、彼のUSA!はこの映画において虚しく響くばかりだ。

過去自分の犯した罪をどう贖罪するかというので主人公は苦悩するが、明確な贖罪の方法が無さ過ぎてそれ故に余計に苦悩する。金渡してる時は、贖罪しようとしてんな~と観てて思うが、だがそれで主人公が贖罪を果たしたと思っているかというとそうでもない。贖罪という行為に縋りつこうとしているシーンであり、贖罪という終わりのない苦悩がずっと続くが、そこに現れるのが女性というか愛する人というのが自分自身にとっての救いなのかもしれない。
三樹夫

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