木野エルゴ

カード・カウンターの木野エルゴのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
2.8
カジノでブラックジャックに興じる男。かつて米軍の刑務所で服役していたこの男は自らをウィリアム・テルと名乗り、毎日同じルーティンで生活してカジノで日銭を稼いでいた。ウィリアムはある日、ポーカーの地方大会を見学していた魅力的な女性ラ・リンダから大金を得られるオファーを受ける。一度は断ったウィリアムだったが、ある人物に復讐しようと画策している青年カークと出会い、ある目的が芽生えたことでオファーを引き受けることにした…

流し見で視聴していたのでカークの動機やらウィリアムの過去を微妙に見逃した。なので見終わった後に他の人の批評や感想をみて内容を補完した。

アブクレイブ刑務所の事件、正義の名の下に行われたアメリカ軍による非人道的な行為。その罪科を背負った人物による贖罪がテーマらしいのだが、やはりここらへんのコンテキストを理解しているか否かで作品に対する解像度が変わるんだろう。

「ウィリアムテル」の名前も自分は作曲家の名前だと思ってた。運動会とかで流れてるやつ。「ウィリアムテル」が曲名(というかオペラ)だったことを今回初めて知った。ちなみに作曲家はロッシーニ。

バブル期に作られたやたら質の高い深夜ドラマみたいだと思った。そう感じた理由としてパッと思いついた点が2つ。
ひとつは、人が映り込まないカットや魚眼レンズを使ったような映像など、普段自分が見るような映画とは異なる、セオリーに従わない画の作りをしていること。
ふたつめは、主演のオスカー・アイザック以外のキャストが「2時間ドラマの脇役で出てくるテレビ慣れしていない舞台俳優」っぽい感じがしたこと。芝居の上手い下手ではなく、世界観に馴染んでないように見えた。特にラ・リンダ役のティファニー・ハディッシュ。やたらオーバーな表情をするなと思って調べたらスタンダップ・コメディアンでコメディエンヌだった。なるほど通りで。

なんていうか全体的に「世にも奇妙な物語」みたいな感じ。オスカー・アイザックを愛でるために作られた作品っぽさがある。トイレで携帯から顔を上げたオスカー・アイザックの目が撮りたかったんだなぁという監督の意気込みを感じた。

「ギリシャに消えた嘘」では父親の影を持つ男を追う立場だったオスカー・アイザックが、今度は父親的な立場で青年と接しているのをみて、約10年の歳月を感じた。
木野エルゴ

木野エルゴ