ひでG

カード・カウンターのひでGのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
3.7
タイトルだけから勝手にお話を想像して観出しました。監督がポール・シュレイダーだとも知らずに。
そう、「オーシャンズ・シリーズ」のような軽いギャンブル逆転ドラマだと思ってました。
軽さとは真逆の映画でした。

主人公ウィリアム・テルの生き様としては、
「イコライザーシリーズ」やポール・シュレイダー脚本の「タクシードライバー」に似ているなと思いました。
また、主役の独白で進む点では、「ザ・キラー」と雰囲気は似ていました。

とにかく先が全く読めませんでした。
主役の名前さえ定かでない中、冒頭のカードカウンターの説明、んん、分かったようなわからないような、、簡単なトランプ遊びで、
「もう○は3枚も出てるから君は持ってないよね?」みたいなことですよね、、
確率の問題だし、これってイカサマではないので、最終的に少しずつ勝っていくという生業としてのカードゲーム。彼自身もそこは自制しているので、カード場面は実に地味です。
劇中に大騒ぎする集団が現れますが、そこでのカタルシスを得る方向には向かいません。

1人の青年が彼を訪ねてきて、そこにラ・リンダという女性も絡み、カジノ旅が始まります。

冒頭の刑務所での様子の独白と突然挟み込まれる刑務者内(まるでナチスの収容所)の残酷なショット、限られた情報をつなぎ合わせる作業を観客に課しながら、物語は、いや各ショットが連なっていく緊張感を保っていきます。

淡々と計算され尽くしたカードゲームとは違い、主人公が一気に勝負をかける時、それまで抑えていた、隠されていた彼の抱える過去への贖罪と復讐が噴き出てくる。
一気呵成、怒涛のクライマックスへ。

人生はカードを数えるようにいかないといくことか、はたまた、この結末も可能性の想定内なのか、かなりクールな締め方で見事だと思いました!
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