もっとおどろおどろしいホラー映画かと思っていましたが、どっちかと言うと芸術映画寄り??
アイスランドが舞台のホラー映画と言うことでこれも北欧ホラー??アイスランドって北欧という位置づけなのかはよく分からないが、『ミッドサマー』から『ハッチング/孵化』ときてこの『RAMB』ですから、今北欧ホラーが熱いのかもしれない。
監督:ヴァルディミール・ヨハンソン
全く知らない監督ですが、今作が長編映画デビュー作らしい。
それまでは映画の特殊効果を担当していたり、タル・ベーラ監督の元映画の授業を受けていたとのこと。直近でタル・ベーラ監督の『ダムネーション/天罰』を見ていたこともあってか、この『RAMB』からも似た匂いを感じたのですが、あながち間違いではなかったのかもしれない。
この映画で沼地?の奥から夫のインヴァルが息を切らせてかけてくるシーンがありますが、あのシーンは物凄く構図的にも風景的にもこだわりを感じましたし、タル・ベーラ的な芸術的なショットだと思いました。
主演:ノオミ・ラパス
何故かエンドクレジットまでノオミ・ラパスだと気づきませんでした…
ノオミ・ラパス演じるマリアと夫インヴァルの羊飼い夫婦の話。
この夫婦のバックグラウンドとして過去に何かあったことが匂わせられるが、それが語られることはありません。セリフも少なく多くを語らない映画です。
その過去にあった何か(恐らくは子供を亡くした)がこの夫婦を苦しめ、突如授かった羊人間(通称アダ)を受け入れ溺愛させる。喪失感による現実逃避によってその"異様"とも言えるアダちゃんをわが子のように受け入れる様はやはり狂気じみている。この狂気と悲しみがこの映画のミソだと感じた。
またこのアダちゃんがね…かわいいと感じるシーンもあれば、心底不気味だと感じるシーンもあり、造形が絶妙です。
キリスト教において子羊は「神の子羊」とも言われキリストのことを指す言葉らしいが、クリスマスに懐妊した(という解釈であっている?)といった面からしても、このアダちゃんはキリストを象徴するものだろうか??この映画の"意味"についてはいろいろな解釈が出来ると思うし、まだ自分も解釈できていないのでこれ以上は分からない。
----以下ちょっとネタバレあり---
反面、表面上のストーリーは明確である。
マリアがアダの母羊を殺した結果、夫をアダの父に殺された、因果めいた結末からのエンドロールの『サラバンド』がとても心地よい。
ラストのマリアの表情からは感じられるのは、悲しみ、喪失感、ある種の諦め、それともより狂気を深めたのか…
あそこからアダちゃん奪還のへの復讐旅が始まったら、それはそれで面白そうだと思った。