このレビューはネタバレを含みます
アイスランドの山間地帯で牧羊を営む夫婦が主人公。
ある日彼らが飼っている羊の一匹が、半獣半人の異形の生命を産み落とす。二人はその子をアダと名づけ我が子のように育て始めるのだが......という話。
もっとホラー寄りかと予想していたのだが、寓話的なメタファーを含みつつも全体的には家族の悲哀を静かに描いた人間ドラマだった。
説明セリフが極端に少なく、夫婦の対話やや日常風景を通して、夫婦が子を亡くした事実などが分かってくる。アダの存在についても羊の顔をしている描写だけしか見せず、歩けるくらいに成長するまではどんな身体なのかを開示しないで物語を進めるのも非常に上手い演出だと感じた。羊を見慣れていないこともあり、最初は不気味に感じたものの、途中から段々と可愛く見えてくるようになった。アダの人間と羊の部分が非対称になってるのは印象的。
後半から夫の弟が帰省してきて、一緒に暮らし始める。盲目的にアダを愛する夫婦の話に、外部からの視点を加えて登場人物たちの複雑な内面が顕になっていくのも面白かった。妻のアダへの執着とそのために手段を選ばず醜い感情をさらけ出すところが凄まじかった。
夕飯前に鑑賞したのだが、劇中の料理がどれも美味しそうだった(^^)
なんといっても、意外性抜群なラストにはビックリ!因果応報なのだろうが、突然の結末なのですごい驚いた。
人によって評価分かれそうな映画だが、僕はすごい好みの作品だった。
登場人物たちがやたらと日の明るいうちから寝てるなあと思ってたら、アイスランドは白夜が起こる地域なのね......