脳みそ映画記録

LAMB/ラムの脳みそ映画記録のレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.2
 北欧のこの手のホラーって美しい情景を映しているのにどうして言いしれぬ不安な気持ちにさせるのでしょうね。



 殆ど台詞がない中で冒頭夫婦が時間旅行に関する会話をしています。過去と未来どちらに行きたいか。この問いかけが結構重要になっているように思います。

 半人半羊の子が生まれ、夫婦は亡くした娘の名である"アダ"と名付け、子のように育て始めます。
 この時点でこの生活(または幸せと言い換えても良いです)は一時のもので、いずれどのような形であれ破綻することが約束されています。
 この夫婦は亡娘の名を付けることで、過去の喪失から目を背け、破滅が見えているのにも関わらず我が子として生活を築くことで、未来もまた見ていません。過去にも未来にも行けない選択をしてしまいます。
 この物語の言いようもない不安感の原因の一つははこのあたりにあるのではないでしょうか。
 


 また、室内のシーンは割と狭く描かれているのと対象的に屋外のシーンは北欧の美しい大自然が広々と描かれています。特に高原を映したときの横への広がりが印象的でした。
 この神秘的な自然の風景は美しいですが、どこか恐ろしい畏敬の念を抱かせます。確かに人智を超えた何かが存在しても、出来事が起こってもおかしくはないと思わせます。

 個人的には嫌な不安感を抱かせてくれて満足するホラー作品でした!!



 最後に、パンフレット購入推進部としては、パンフの装丁に触れておかねばなりませんね。

 厚手の白色カラーにLAMBのロゴと羊のワンポイントがエンボス加工で施されていて高級感があるので、1つ手にとっておくのは良いかと思います。
 ただ、最初からとんでもないネタバレが書かれているので観賞後にご覧になることを強く勧めます。その他に羊の種類やアイルランドの暮らしなどの解説もあります。
 また、中には漫画家の板垣巴留のコラボ漫画冊子も付いているので、ファンの方は嬉しいのではないでしょうか。