Yukio

LAMB/ラムのYukioのネタバレレビュー・内容・結末

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
2.1

このレビューはネタバレを含みます

【まとめ】

映画館で観なくても良いかも、という感じ。
オチが読めそうな感じで、少しどきどきさせられる要素はあるけれどもあまり大きく感情を揺さぶられる映画ではなかったな。でも元々あまり期待せずに観たのでそこまで大きく落胆はせず。

ただ振り返ってみて、自分がどういう展開が好きで何を期待して何を嫌だと思うかについて考える時間にはなった。…妄想は楽しい!

【よかったところ】

・羊人間に対するオーディエンスの気持ちの変化:

ヤバいのは生まれてきた羊人間のアダか?と思いきや、だんだんアダが”癒しのヒツジのアダちゃん“になっていった。最初は画面内の羊人間を見る度、ウワァ嫌な事起きそう…と思っていたのが、最後の方は萌えを感じ始めている…そんな自分の感情の変化を客観視すると面白かった。この変化を経験したオーディエンスは恐らく少数ではないと思う。

・人間の欲求とエゴVS無垢な動物の対比:

上記の通り、アダちゃん可愛い〜に至ったのには、“本当に怖いのは人間”と思わせる描写があったからだと思う。

「性的欲求」を現すシーンは終始さまざまな形で描かれているが、動物として当たり前の事の筈なのに、何が起こるかわからない不安感を演出していて良かった。

そしてマリアのエゴ。本当は、お腹を痛めて産んだのは羊なのに、「あっちいけ!!」と母羊に怒号を浴びせたり、挙句撃ち殺す様は、人間のエゴって感じで良い。それをダシに脅すオジサンも人間くさいし嫌なやつ。

対照的に猫とか犬とかモブ羊達とか普通の動物はかわいい。犬は従順で表情も何だか愛嬌がある。この可愛さ、安心できる感じを、見た目がほぼ羊のアダちゃんにもつい感じてしまう。しかもアダちゃん、喋らないし。ほぼ服着てて頭しか出てないし。もっと肌色シーンが多かったら、嫌だったかもしれない。あとは、アダの動物感を感じ取れるシーン:スポーツ観戦であがった歓声、大声にビクつき居心地悪そうにしているところ、おじさんに草を出されてムシャムシャするところはなんだか家畜感があって良かった。やっぱり動物なんだよな…と思う事で得体の知れない何かが打ち消される。多分私は安心したかったんだろう。


・羊人間アダのルックスのキモさ:
散々可愛いアダちゃんとは言ったが、初めて首から下が一瞬映し出されるシーンはキモい。予想よりかなり大きな人間の下半身。うわ、キモい。一応この嫌悪感あるキモさを期待していたので、良かった。

・羊人間ダディの登場
「は?」となったオーディエンスもいそう。コメント欄でも意味不明と思った方もいるようだし。銃を構えてる姿はカッコいい。個人的には、あの感じは好き。人間とも動物とも取れない謎から因果応報くらうかんじ…。

・少ないセリフと鬱っぽい景色:
場面を観察したくなるように出来ている。説明ったらしいセリフは冒頭くらい(でもここがちょっとわざとらしかった)
景色が綺麗。冬を感じさせるシーンが殆ど。画面がいつも曇り。広大な大自然の中に広がる一軒家。不穏な空気が充満してて見てるだけで嫌な感じがして良い。

【思うところメモ】

・終わり方は、“あとはオーディエンス個々にその後の展開を考えていいよ”と言った感じで言い方は悪いけれどストーリーとして安全牌。

*映画解説サイトで、ラストのマリアの目線の意味に関しての考察を読みましたが、そこは気づかなかったな。そこだけもう一度観て納得できるか確認したい。

キリスト教的要素(クリスマスの夜、キャラクターの名前:マリア、アダ)がありつつも、ギリシア神話のサテュロスがモチーフだという解説は面白かった。

・中盤、数秒だけ出てくるでっかい羊。耳にタグがついていたので家畜かと思うけれど、胸のあたりに縦に裂けたような小さな穴があって、そこから息してる?と思うような描写。ハアハア言ってるし。明らかに普通の羊じゃないと思わせるアレ、一体なんだったのだろう…最後まで分からなかった。これも考察のひとつになるのかな。

・そこまで観るのが苦痛ではなかったにしろ、話のボリュームを考えるに106分ではなく、ショートムービーでも十分詰め込める作品だなと思った。エンドロールが流れてすぐ思うくらいには、長いわりに…という感じはする。

・アダの、本当の母である羊に対しての気持ちはどうだったのか。窓辺にいつもやってくる母羊。自分を抱いているのは、その母羊ではない。どう思ったのか…。母羊が殺され埋められ、いつそれがアダに見つかるのかと、少し期待していたけどそこは最後までセーフだった。でもまあ、それでも良い気もする。

余談:

タイムトラベルの話を冒頭で出した事で、マリアが過去に何らかの未練があることが見て取れる。物語のテーマからも、“子供を授かれなかったことを引きずっている女性”というキャラクターの背景を見せている会話だが、これでタイムトラベルが可能になり夫が何らかの形で過去となった現在(冒頭の時限)にやってきて、羊とセェックス!したのかと…。

そして実はその母羊は未来からきたマリアだったんじゃないのか?とか完全に脱線した妄想をして、母羊がマリアに殺されるのをみて、自分を殺しちゃったかも〜なんて思っていたけれど、そんなチープなSF小説みたいな妄想は外れた!笑
でもタイムトラベル、なんてワードをわざわざ出さなくてもよかったんじゃないかな。そこが冒頭から引っかかった。
Yukio

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