ひれんじゃく

LAMB/ラムのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.8
え…羊…怖……という浅い感想しか抱けなくて嫌になってしまう。特に展開が〜とかいうこともなかったし、明らかにエンタメ向きの作品ではなかったし、面白いと感じるものでもなかったが、それでも終始一貫した雰囲気みたいなものは感じ取れたように思う。

以下ちょっとネタバレ??
























聖なる鹿殺しを何も予習しないまま観た時の教訓から、アイスランドにはこれに似たような内容の羊の民話があるのだろうか?とチラッと覗いてみたけどどうやらそんなものはないらしい。おいおいマジか、元の話も無しにどうやったら理解できるってんだと頭を抱えた一方で、現代の民話っていうキーワードを見かけてなんとなく腑に落ちた気もする。何の前触れもなく生まれてきた人ではないものに愛着を見出して、子供同然に育てるけど結局その子はあるべきところに帰っていってしまうという昔話。日本の昔話だとかぐや姫が近いのかなあ。かぐや姫は罪人だったけど、アダは少なくとも本物の両親がいて、でも母親は身勝手にも殺されてしまって、そのように他者の幸せを奪ってまで自分たちの幸せを形作っていいのか?という。まあ勿論ダメで、最後は同じような構図で仮の父親は殺されアダはいるべきところに帰ったんですけれども…

ただかぐや姫と違うのはアダは父親に怯えていたっていうところかな。自分の正体を知っていて淡々としていたかぐや姫と、父親の姿を見て真っ先に家に逃げ帰るアダ。アダですら自分が何なのかをよくわかっていなかった感じがまた不気味というか物悲しいというか。死んだ子供の名前をつけて可愛がる人間の夫婦と、彼らの家族の一員になろうとする得体の知れない何かっていう歪さがなんとも後味が悪い。アダくんの本当の父親は両手が人間だったけど、アダ本人は片手が人間で片方が蹄っていうミックス感否めない存在だったのもなんか怖い。

扉や窓などで四角く切り取られた情景の中に閉じ込められた登場人物や、柱や壁などではっきりと分たれた境界線といった表現が目立っていた気がするし、やっぱりアダは最終的には帰るべきところが別にある、境界線の向こう側の存在だったんだろうなとぼんやり思った。マジで民話って考えるとちょっとしっくりくるような…???
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