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LAMB/ラムのmatsushiのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.7
批評家も、一般客もそんなに評価が高くない理由が腑に落ちた。

フィックスでのフルカットの多用だったり、音楽の使い方だったりA24が好きそうな不穏演出のオンパレードに胸が躍る。
だからこその"ラスト"で批評家はその期待を裏切られる。
一方一般客は突飛なホラーとして見るので不穏演出からの何も起こらない"A24"らしさに困惑してしまう。

北欧らしい芸術映画でありつつ同時にエンタメ映画でもある本作は、個人的に好きな部類だし、少なくとも新しい映像世界を見せてくれたことは確かだ。ただ、逆にその挑戦が困惑させる要因だったのかもなとも思う。
初めから本筋を不穏に匂わせつつ、サブストーリーで気をそらせるからこそのあの没入感なんだなと思うと、演出と脚本の上手さが非常によくわかる。
次のシーンでの出来事もラストの着地点もわからない巧みなストーリーテリングと、不穏さと不思議さを醸す演出にいつのまにが心が掴まれてしまう。

ギリシャ神話や北欧民話などの要素を入れつつ、多様な解釈ができるものの、難解ではなく、個人的には性欲を含めた「人間の欲」が本作の主題。

作中の絵本のセリフであるように(おそらく北欧民話)「いい子にする」ことが鍵だったようだ。
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