YAJ

LAMB/ラムのYAJのネタバレレビュー・内容・結末

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

【要反芻】

 実に久しぶりの鑑賞@映画館。9月1日に『戦争と女の顔』を観て以来か。夫婦そろってだと8月にUPLINK吉祥寺で『ROCKY4 』を観たのが最後。2か月半、映画鑑賞から遠ざかってた。

 で、久しぶりのリハビリに観るには、なかなかシュールで難解な作品だった、このアイスランド作品。原題は現地語で『Dýrið』、「動物」という意味らしい(← 難解な作品はその原題から探るとヒントを得られることがままある)。
 多分、ヒトでもなくヒツジでもない、ということを表現したのだろう。ラムじゃ子羊だもんな。そうじゃなかったよ。

 多分に、寓話的要素や、宗教的な教えが含蓄されていたのだろうと思う。受胎、因果応報、迷える子羊・・・ 様々なメタファがちりばめられていたのだろうけど、宗教、特にキリスト教に疎い身には、想像を働かせるのが精一杯だった。
 とはいえ、ノオミ・ラパスの演じた主人公の名はマリア、聖母からとったもの。最後には黒ミサを司る異教の神、バフォメットを彷彿とさせる山の神と思しき存在も登場するのだから、キリスト教的あるいは反キリスト教的なものをモチーフにした、なんらかの戒めを孕んだ物語だったのだろう。

 突飛な設定とはいえ極めて平坦なストーリー展開を、ゾワゾワとした不気味な緊張感でエンディングまで引っ張ったところは見事と言える作品だった。
 どこまで理解できたかは、自信ないけど。



(ネタバレ含む)



 ちょっと衝撃のラスト。というか、唐突なラストだった。
 そこへ至る伏線は、授かった”何か”を自分たちの子として育てるために母羊から奪っただけでなく、その母羊を無慈悲に葬ったマリアの所業に対する報いだろうということは理解できる。が、であれば、なぜマリア本人ではなく、夫イングヴァルなのか。
 そもそも理屈の通ったものでもないのだろう。バフォメットたる羊男の存在も人知を超えた自然現象の一つであるとすれば、人を選んでのことではないのかもしれない。

 あるいは、マリアには今後も産み出される”何か”を育てる役割が課されていて、そのために生かされていると深読みすれば、なんとも業の深い罰が下されたものだ。もう罰というより、悪魔との契約であるかのような・・・。

 あの土地がそんな運命の下にあることを思わせるのは、冒頭の誰の目線だ?というシーンの連続か。
  誰が近づいていることで馬が方向を変えて逃げ惑うのか、なぜ羊が厩舎のなかで騒ぎ出したのだ?という謎が解けてくるのかもしれない。
 あの土地を司る羊男の存在がハナっから匂わされていたんだと、あとから思い出してゾっとしている。

 虚を突かれたエンディングではあったが、あとあと反芻すればするほど(ヒツジがモチーフなだけに)、奥の深い作り込みがあるオタク気質をくすぐりそうな作品だった。
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