CHEBUNBUN

マンディブル 2人の男と巨大なハエのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【うさんぽの次は「ハエんぽ」だ!】
※cinemas PLUSさんに紹介記事を書きました。
【下半期注目】キテレツ魔術師「カンタン・デュピュー監督」のおすすめ作品“3選”↓
https://cinema.ne.jp/article/detail/50103

殺意を持ったタイヤを描いた『ラバー』、語りかける革ジャンを描く『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』と変わった映画を撮り続けるフランスの《クエンティン》ことカンタン・デュピュー新作はハエ映画だった。今年は『GUNDA』、『ジャッリカットゥ 牛の怒り』、『セミマゲドン』と動物映画が熱いのですが、このハエ映画はいかがだろうか。実際に観てみました。

犬に首輪をつけて散歩をする風景はよく見かけるが、最近だと猫やうさぎに首輪をつけて散歩させるケースも目撃されている。特に後者は「うさんぽ」という概念が登場し、インスタグラム界隈でうさんぽの集いが形成されている。ジャン=ガブリエルとマヌの間抜けコンビはどうか?盗んだ車のトランクから巨大ハエを見つけた二人は、このハエに金の匂いを嗅ぎつけ、調教しようと目論む。逃げられないように羽をガムテープでぐるぐるに巻き、クッキーで餌付けしたりしようとする。だが、うっかり人目につくと大騒ぎになってしまうので、調教が終わるまで二人だけの秘密にしようとして雑にトレーラーを奪ったりして冒険をしている。

彼らが盗んだ車で旅をしていると、車が故障してしまう。ユニコーンの自転車で牽引していると、心優しい方が海辺の別荘を貸してくれることになる。だが、この海辺の別荘には大声で叫びながらしか話すことのできない女性がいて、彼女が彼らの不審な行為を監視しており、バレるかバレないかサスペンスになっていく。

本作は一見、小学生が画用紙に考えたような馬鹿げたお話だ。しかしながら、『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』が虚栄心を風刺した作品に対し、こちらは取らぬ狸の皮算用を軽妙に風刺している作品でもある。金の匂いがすると嗅ぎつけているが、彼らのハエ「ドミニク」に対するアプローチは犬を愛でるように接するだけである。よくあるモンスターを隠しながら育てるにしても、白昼堂々飼いならしている馬鹿馬鹿しさがあり、彼らが大儲けできないことは明白だ。ではこの映画のラストはどうなるのか?映画を観慣れている方なら、一つに定まるであろう。だが、本作は一旦、そのエンディングを提示した後にホッコリとしたツイストを魅せる。

現代はなんでも最適化され、職やライフスタイルのあり方が少なくなってきて自由が失われつつある。それを映画は豪快無茶苦茶な人生にも光を当てることで、そんな息苦しい現代を癒す効果がある。『ビーチ・バム まじめに不真面目』もそうだが、『Mandibles』も馬鹿げた二人の珍道中に癒しが溢れており、シンプルながら微笑ましい映画でありました。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN