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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のMountainMoviesのレビュー・感想・評価

4.0
こどもに向けられて作られた映画には往々にして大人から子供へのメッセージが含まれている。
この映画はそのメッセージを説教臭くなく子どもたちにまるごと託しているところが素晴らしい。

ケンとチャコがあの時代から未来を夢見るのは、あの時代で未来は消えてしまったからだ。
あの時代(万博が行われていた時代60年代後半から70年代前半)
のカウンターカルチャーには、なにか違う世界が始まるという期待があった。
しかし、資本主義に対抗する各運動は時間とともに鯔されて立ち消えになり、
ソ連の崩壊とともにほぼ消滅している。

もはや現在に目指すべき未来はない。
2001年の映画なので20年も前ではあるが、その頃と状況は同じだ。
チャコの「いらないものばかり作って世界はどんどん醜くなる」という台詞は
方向性を失い各々の主観だけでものを生み出し続ける歯止めがきかないこの世界のことを言い得ている。
ケンとチャコは現在を全否定し過去で生き続けようとするが
しかし全否定したところで目指す未来は現れないのだ。
対抗するには、そんないらないものばかりの世界からなにか光るものをさがさなくてはならない。

しんちゃんは、そんな中でも大人になりたい(未来を見たい)と
キレイなおねえさんとお付き合いしたり、
家族と一緒に暮らしたいという、一つの光をきちんと見つけ出している。
ギャグで放たれた言葉だが、それが大人の一つの楽しみでもある。
そうゆうメッセージの含まれた映画だと思ってる。
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