オジサン

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のオジサンのレビュー・感想・評価

4.0
野原ひろしが格好良いなという子供心の、と言っても公開から翌年のテレビ放映された時の現体験とはちょっと言い難いそれでいて一応は20世紀生まれの大人になった目線から見ると政治、経済、社会が果たしてたしかに子供の頃に思い浮かべてた未来かと考えると全然違うって気付かされちゃう映画です。

なんというかこの映画のノスタルジーっていうのは、単純な昭和の町並みだとかの絵面だけじゃないんでしょうね。

普通に思い返してみると、子供の頃って未来に凄い希望を持ってたわけなのですよ私も。
きっと世の中はもっと便利になってて、まあそれはたしかに便利な世の中にはなってますけど便利になった反面それによる問題もあったりして、それになんの確信もないのにもっと未来っていろんな意味で豊かになるという夢だとか表現できるものがたしかに子供心にあったような気がします。

そう考えると、もう散々いろんな方から擦られているのでしょうがイエスタディ・ワンスモアなる結社の言い分も判らなくもないんですよね。

でもそれって大人目線からですから、野原しんのすけたち子供目線で見ると未来への希望というのが対比みたいなものとしてあって、そしてこの作品は子供向けのアニメ映画ですからイエスタディ・ワンスモアの要するに後ろ向きで停滞することを選ぶ考え方というのはたしかに楽だったり救いだったりするわけなのですが、間違いなわけなのです。

その上で未来への希望だとか過去への望郷心みたいなものとはまた別に急に家族愛とかテーマに持ち出したりしてくるものですから、この映画はかなり完成度高いなと思います。

一言で感動と断じる前に、親は自分がどんなに苦しもうが我が子に代えられる他の何かは存在しなくて、子は子で未来を親と進んでいきたいと想い願うわけですが、ここで親から子へと子から親への愛情というのはその方向性が違うのがはっきりしてますよね。

無条件で守らなければならない存在がいる守る側と、誰に言われたわけでもなく無意識下に守る側に報いようとする守られる側と、ここで科学なんかでは未だにそのメカニズムが証明されない愛情という感情の働きが存在していて、それをクレヨンしんちゃんはギャグアニメみたいな側面も強いわけで野原ひろしの強烈な足の臭いという感動をぶち壊しかねない要素があるわけですが、

その野原ひろしがイエスタディ・ワンスモアの洗脳が解ける際に走馬灯みたいな涙腺崩壊させるためだけに存在するようなシーンで何故それが子供の頃から振り替えられるのかというのも、親も最初は誰かの子だったわけで未来に歩みを進めて行ったその上で足が臭いというのが洗脳を解く切欠という本当にいろんな意味で狙ったかのような臭い演出なのでしょう。

戦国大合戦よりも私はこのオトナ帝国の方が好きですね、ただ子供向けのアニメ映画なのに子供には伝わりにくい大人へ向けたアニメ映画で、それも少しは考えながら鑑賞しないと判らないという芸術品みたいな澄ました本来は子供向けのアニメ映画ということで、評価は星4つですかね。
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