となりの

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のとなりののレビュー・感想・評価

4.5
資料としてしばしば見返すけど、やはりよい作品。

どうしてもヒロシが我に返るシーンは泣ける。
20世紀のニオイにあてられてしまったヒロシとミサエだが、長年歩き走ってきた足に蓄積された「ニオイ」を嗅いで、現在に帰ってくる。
そして、しんのすけは、ラスト、汗と鼻水と血を出して転びながら、ボロボロの足で走る。
大きな物語が失効するなか、家族がかもすニオイを提起するようで上手い。

そのうえで、ケンとチャコの描かれ方が重要だろう。
走る野原一家を見て「最近走ってないなぁ」とこぼすケンと、汚れのない白いブーツを履くチャコは、野原一家のようには家族になれなかった二人。
ケンの「また家族に邪魔された」という発言を踏まえるに、二人は「家族」ではないようであり、その二人に、ミサエは「二人は結婚してるの?」と問い、ヒロシは「あんたらにも家族のいる幸せを分けてやりたいくらいだ」と啖呵を切る。そしてしんのすけは、死のうとする二人に「ズルいぞ」と言う。
思い描いた希望に溢れた未来を生きることも、死ぬことも「家族」に邪魔される二人のいく先について、さいごヒロシは「どこかで生きていくだろう」と述べる。

救いではなくても、そうしたひとたちがいることを描いている点ももっと検討・評価されるべきだと思う。
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