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ダンシング・ヒーローの一人旅のレビュー・感想・評価

ダンシング・ヒーロー(1992年製作の映画)
5.0
バズ・ラーマン監督作。

オーストラリア出身の映画監督:バズ・ラーマンが自作の舞台劇を映画化した監督デビュー作で、上映時間90分強とコンパクトな作品ながら、映画において求められる総ての要素を凝縮して詰め込んだ傑作です。

社交ダンス界の期待のホープである主人公:スコットは、大会で規定に定められたステップ以外のオリジナルステップを即興で踊ったため優勝を逃した上にダンスパートナーにも去られてしまうが、誰からも相手にされていなかった控え目な性格のヒロイン:フランに誘われるかたちで新コンビを結成、時間に猶予がない中ダンスの猛特訓を積み重ねていき、やがて実力を高めた二人は豪州全土が注目する汎太平洋グランプリの本番に挑んでいく―という“ダンス青春ムービー”の傑作で、ダンスを通じて惹かれ合っていく主人公&ヒロインのロマンスや、暗い過去を抱える寡黙な父親と主人公が織りなす父子ドラマ、そして保守的&私利私欲まみれのダンス協会幹部の腐敗に対する主人公の反抗と解放…と目を離せない恋愛&人間ドラマを手際よく織り交ぜながら、カタルシス満点のダンスクライマックスへと突入していきます。

メリハリの利いたカメラワーク&色彩感覚はデビュー当時から確立されていて、本作で磨いた映像&演出上のテクニックがのちの代表作『ムーラン・ルージュ』(01)で結実していったことが分かります。また、シンディ・ローパーの「Time After Time」を始めとした既成曲の挿入が心憎いですし、主人公がヒロインの家族との出逢いをきっかけに取り組んでいくラテンダンスのハイテンポなリズムも小気味よく描出されています。

“夢を追求すること”の素晴らしさをダンスに情熱を捧げる男女の奮闘を通じて力強く描き上げた青春ドラマで、バズ・ラーマン監督の原点にして最高傑作であります。また、主演のポール・マーキュリオは元々豪州のトップダンサーとして名を馳せた人物であり、相手役のタラ・モーリスは本作の原作に当たる舞台版でもヒロインを演じています。
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