ルサチマ

核家族のルサチマのレビュー・感想・評価

核家族(2021年製作の映画)
4.7
核の歴史に囚われた監督が家族を引き連れ旅に出るという意味においてはホームムービーと位置付けて決して間違いではないが、なんでもないアメリカ西部の景色から隠蔽された悲惨な核の歴史を核実験の映像をはじめとするインサートから立ち上げていく今作は一般的なホームムービーとは明らかに異なる世界がカメラに焼き付けられている。

厳格且つ強烈な眼差しによって地面に釘を刺されたかのようなカメラと核爆弾の煙を捉えるために選択されたであろうシネマスコープのフレーミングが刺激的。

決して当時の記憶を知るはずもない家族の子供たちは大してやることもない西部の場所で適当に走り回り、ホテルのプールで遊ぶ。

この子供たちは旅の道中で見た景色を今作の監督が幼少期に父に連れられたときに体験した強烈且つ悲惨なアメリカ西部旅の記憶と同じように見つめていたのか、もしくは今後大きくなった時にこの旅のことを思い出すのか知る由もないが、この映画が描きこむ余白があるとしたら子供たちの眼差しが何を捉えていたのかという視座であったかもしれない。
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