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核家族のmingoのレビュー・感想・評価

核家族(2021年製作の映画)
3.9
山形常連のウィルカーソンの新作は核兵器の地を家族で巡るロードムービー。
ロッキーフラッツは40年間核兵器製造の拠点で長崎の原爆級のプルトニウムが70000個つくられた。24キロ風上に位置し、69年に起こった事故がパッド903。廃液が土壌に漏れ出し汚染が判明。プルトニウムの半減期は2万4000年だが工場側は65年と判断、汚染作業は10年に満たず環境保護庁は臭いものに蓋をして終了した。皮肉なことに今は動物保護区に。
食べる場所は街に一軒のsubway。サンドクリーク虐殺の映画を想起させる一本の木。アメリカ先住民の破壊と世界滅亡の危機は絡み合った指のごとく切り離せない。「武器で土地を奪え。土地を武器にしろ。銃口を全員に突きつけろ。」西部の歴史はサイロの歴史に重なる。風下の街ウィルカーソンの生まれた場所パークヒルにも放射能は降り注いだ。
クローバーはミサイル航空団の拠点。のどかな土地とは反対に永遠に来ない命令と退屈な時間で発射担当官の不正や薬物の常態化、静の時間が孕む核の弊害。
大気中の酸素や極小の生命体にまで影響を与える連鎖反応。バークレービットは死の穴だ、その殺人池は鋼鉄のプロペラまで溶かし350羽もの雁を殺し死んでいく鳥は数知れない。フォートベートンではバッファローが絶滅。絶滅は時代の流れでも何でもない、ただの大量虐殺。それでも静かに頭が2.3個咲いた変異種フクシマデイジーの美しさに目を離すことができない。戦うカラス、日明かりのかぶと虫。素晴らしい詩と相反する人間の作り出した悪魔の兵器。
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