うべどうろ

ミゲルの戦争のうべどうろのレビュー・感想・評価

ミゲルの戦争(2021年製作の映画)
3.6
 山形国際ドキュメンタリー映画祭オンライン。オンライン開催してくれるの本当にありがたいし、今後もあらゆる映画祭がオンライン配信も併走してくれたらいいのにと、強く強く強く思う。
 最初に見たこの作品。賛否が分かれそうに思われるけれど、個人的には「大アリ」だった。作品冒頭、アニメーションが合成を駆使したその演出に辟易とするのも事実だが、128分という長尺で、誰ともわからない一個人に向き合い続ける度胸と構成力には脱帽せざるを得ないのではないか。その人生の中に、「ジェンダー」として、「家族」として、「宗教」として、そして「戦争」としての問題が垣間見えてくる。それをただ一つの人生に絡み付かせるように描き切る。作品の在り方として、とても勉強になった。
 特に「宗教」に関するメタファーの豊富さが僕はお気に入り。「マリア」と重ね合わせる主人公、そして「イエス様」のイマージュを探す監督とミゲル。その行為は、信仰の新しい姿を見たような気がした。だからこそ、監督はきっと最後のシーンに“あれ”を選んだのだろう。その助走はやや冗長で不必要に思ったけれど、監督としてのメッセージを強く描きだすある種のアウフハーベン的な作り方にも思われたので、良しとしたい。
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